Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

赤い彗星

 小学生のころは、確かにマンガを読んだ。「伊賀の影丸」や「サイボーグ009」は好きだった。しかし、中学生になると、まず手にしなかったように記憶している。それでも、大人になっても読む(&見る)に耐えるものは少ないけれど、あった。
 
 ひとつは「機動戦士ガンダム」。初放送時、視聴率が伸びず50話程度の予定が43話に縮められてしまったという不幸な番組だが、後にじわじわと人気があがり現在にいたるも新シリーズが作られている。この原作は、相応の軍事知識を基に書かれたもののようだ。レーダーを無効にするミノフスキー粒子というのは全くの想像だろうが、モビルスーツという兵器の設定には合理性がある。(原型がハインラインの「宇宙の戦史」にあることは承知している)
 
 国力が圧倒的に劣る「ジオン公国」が、地球連邦に対して軍事的優位に立てたのは、モビルスーツという兵器を開発し、かつこれを有効に使ったことにある。モビルスーツが主力兵器だと気付いたジオン公国は、宇宙戦艦・巡洋艦等を単位とした第×艦隊を、モビルスーツを単位として第×師団に改編した。
 
 なんとなく、日本帝国海軍が大艦巨砲主義から航空主兵に転じ、ゼロ戦・九七艦攻・九九艦爆などを中心にして米軍艦隊を打ち破る・・・というストーリーを下敷きにしているようにも見える。ジオン公国初期のモビルスーツ「ザク」は、機動力に勝るが装甲は薄い設定であり、これも「ゼロ戦」を想起させる。(そういえば同じ緑色)
 
 その象徴が「赤い彗星」。シャア・アズナブル少佐専用で、赤く塗られ特別なチューンナップを施した機体という設定である。ルウム戦役では、この1機で4隻の戦艦を沈めたと伝えられる。戦艦などの航宙艦とモビルスーツの機動力には圧倒的な差があり、対艦用の搭載兵器(砲とかミサイル)は、役に立たなかったのだろう。まさに「あたらなければ、どうということはない」のである。

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 ジオン公国の末路もうなづけるものである。モビルスーツ研究を先行しノウハウを蓄積していたゆえに開発される新鋭モビルスーツも、パイロットの質の低下から地球連邦の平凡なモビルスーツに撃破されるようになる。モビルスーツで優位に立ったジオン公国軍が、連邦の量産モビルスーツに屈するのは歴史のアイロニーと言えよう。
 
 それまでのロボット・アニメとは一線を画す作品であり、放送終了後とはいえ評価されている。アニメといえど本物指向になる契機となった「名作」と思う。
 
<初出:2016.7>