Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

凶器としての自動車

 レンタカーとしてトラックを借りる。このありふれた行為が、テロにつながるまでになった。イスラム国は「身近にあるもので異教徒を殺せ」という指示を出しているというが、組織的・資金的にもこれまでのような余裕が無くなってきたのかもしれない。
 
 そうはいっても、単独犯で80余名の命を奪い、50名ほどが重体という被害には驚くしかない。人込みにクルマが突っ込む事故は時々ある。秋葉原歩行者天国に軽トラック(これもレンタカーだった)で突っ込み、人をはねた上にクルマを降りて、倒れている人にナイフを振るうという事件もあった。ニースのテロは、トラックを止めようとした人に対して発砲(おそらくは拳銃程度)し、警官も追い払うという悪質さである。蛇行運転で人込みを狙いながら、かなり正確な銃撃もするというのはどういう訓練をしたのだろう。ただの悪運だったのだろうか?
 
 昔、盗んだ建設機械で店外設置ATMを「ぶっこわす」という犯罪が、顕著だったことがある。日本にはおおむね15万台ほどのATMがあるが、店外設置ものは多くない。いかに建設機械といえど、銀行店舗そのものをぶっこわすのは時間がかかるので、狙われるところは限定できる。当時建設機械にはGPSが搭載されはじめ、どこで稼働しているかどういう動きをしているかは、モニターできるようになりつつあった。今でいう IoT(Internet of Things)のはしりである。
 
 ある建設機械製造会社幹部は、機械のモニターをするきっかけは「店外設置ATMに機械が近づいて犯罪を働くこと」を検知できるようにしたかったからだと語った。今では IoT の技術は、高価な建設機械やタービン・エンジン、ガントリー・クレーンなどに留まらず、一般の自動車にまで適用されつつある。

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 関越道や軽井沢の夜行バスの事故は、多くの(特に若い人の)命を奪った。多くの人の命を預かるこのような車両には、多少のコストをかけてでも動きをモニターしたり、緊急時には制御できる仕掛けを義務付けてもいいのではないか。自動車は「走る凶器」でもある。大型トラックなら戦車とまではいかないだろうが、蹂躙攻撃(Over Run)を仕掛けられることが証明された。
 
 今回はただのトラックだったが、これが危険物搭載のタンクローリーだったらと考えるとぞっとする。以前にも書いたが、技術は社会に貢献すると同時に人を殺めるものにもなる。IoTの技術を、人命を守るためにこのような車両には適用してほしいものだと思う。
 
<初出:2016.7>