北海道の地震から約2ヵ月が経った。全体的に見れば平常を取り戻しているようだが、主力産業である観光業に与えたインパクトは大きい。宿泊キャンセルは115万人に及ぶという。そこで政府は観光業のテコ入れに補正予算からの助成金を出すことにした。「ふっこう割り」という旅行商品が企画されて、宿泊最大50%引き、ひとり1泊2万円の割引になるという。
これ自体はいい話なのだが、このような商品企画ができるのは大手旅行会社に限られるだろう。直ぐに効果が出なくてはいけないし、ある程度の規模も必要だ。だから素早く企画し実行できる大手旅行会社に頼らざるを得ない。大手の取引先は大手の旅館・ホテルになるのもまた当たり前。だから対象となる宿泊施設もまた大手に傾く。
ただでさえ減ってしまった観光客を大手がディスカウントして受注するのだから、中小旅館からみれば「二次災害」のようなもの。本当に支援を求めているところには届きにくいのが実態だ。もちろん地域経済/産業全体を考えれば、やらないよりはやったほうがいい政策である。
似たような話はいくらでもある。増税実施まで1年を切った消費税10%の件、消費税は低所得者に厳しい「逆進性」があるので、低所得者対策含めた景気の落ち込み対策としていろいろな案が出てきている。すでに軽減税率については「天下の愚策」と切って捨てたので、今回は別の施策を考えてみたい。
キャッシュレス決済なら2%分還元するという案、商品券を配る案、給付的税額控除という案、思うにまっとうなのは最後のものだが、ある程度正確に所得等を把握する必要があり、仕組みをつくるには時間がかかる。そこで最初の案がリアリティをもって語られるようになってきた。
うがった見方をする人は、これによってキャッシュレス社会を作り社会全体のお金の流れを政府で把握してしまおうという陰謀だと言っている。まあそういう面もあるだろうが、すでに韓国や米国ではそうなっているから僕としてはスキームはそうなっても、政府が市民を管理するために金流データを使うことを規制する法律を作って対処するべきだと思っている。
本当は低所得者だけでなく、零細事業者にも支援が必要なのですがむしろ零細事業者の首を絞める制度になりかねません。政府の政策はうなづけるところもあるのですが、今回のは「かゆいところに手が届かない」例ですね。
<初出:2018.11>