Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

死刑執行へのハードル

 未曾有の豪雨被害の中、いわゆる「オウム事件」の確定死刑囚7名の死刑が執行された。欧州など人権派の人たちからは一度に7人もの死刑を執行したことへの批判が届けられ、日本は早期に死刑を廃止すべきだとの議論が内外に起こった。

 
 昨年「オウム事件」の裁判のほとんどは結審し、これ以上麻原死刑囚らの刑執行を延ばす意味は無くなっていた。そこで彼らを東京拘置所に移し、いつでも執行が出来るようにはしていた。問題はここからである。死刑執行には、法務大臣のサインが必要である。かつては「自分が法相の間サインはしない」と公言していた大臣もいたし、公言しないまでも(ネグレクトというべきか)サインしなかった大臣は割合目立った。

    f:id:nicky-akira:20190606061511p:plain

 法務大臣はあまりメディアに取り上げられないのだが、重要閣僚のひとりである。死刑執行のサインだけに限らず、法執行関連には難しい判断を迫られることもあると言うし、適正な資質を持った政治家はすくないのかもしれない。さらに政治的パフォーマンスの余地はあまりないので、票にもつながらない人気のないポストだ。
 
 それゆえサインしない大臣が目立ったのかもしれず、知らないうちに死刑が確定した囚人が100名を越えてしまった。ルール上は、死刑確定から6ヵ月以内に執行することになっているにも関わらずである。この100名というのが一つの(暗黙の)基準のようで、100名をおおきく超えないように執行をするように行政は動いているように見える。
 
 そんな中「大口」なのが、「オウム事件」の死刑囚たち。彼らを執行するとしたら首班の麻原死刑囚を最初に執行するのが普通で、ほぼ同時にできるだけ多くの執行をすべきだと行政関係者はかねて言っていた。あとは、どの法務大臣が歴史に残ろサインをするかに掛かっていたように思う。この記事は上川法相の決断を評価しているが、私も全く同感である。
 
 
 上川先生は総務副大臣をされていたころ、2度食事をともなう会合でお話を伺ったことがあり、意志の強い政治家だとの印象を持っている。女性の法相が7名同時執行を命じたことは、いろいろな世界でダイバーシティ意識を高めていくうえで重要なことだったと思います。
 
<初出:2018.7>