Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

企業経営者の資質

 数カ月前、「就活ルールを産業界で決めることには違和感がある」として、このルールにタッチしないとして物議をかもした経団連だが、今度は大学のカリキュラムへの提言をまとめたという記事があった。

 
 
 記事の見出しとしては「文系学生も(大学で)数学を勉強させろ」という風に書かれているが、趣旨としては日本の大学が文系・理系に分かれていることへの問題意識を表した提案のようだ。もう少し深読みをすると、日本の企業経営者は比率的には文系出身が多い。それゆえデジタル時代の変革への感度が鈍いのではないか。そうすると日本企業の国際競争力が長期的に損なわれるとの危惧ではないかとも思う。

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 例えば昨今世界的に問題が大きくなっているサイバーセキュリティ対策、米国の大手企業幹部は経済学や法学の研究室出身でもデジタルの基本は抑えていて、技術者からの説明を理解するしそれをとりまとめて株主やお取引先に対して自ら説明もできる。そうでなければ、CEOなどできないし直ぐに追放されてしまう。
 
 しかるに日本企業に聞くと、CEOはサイバーセキュリティ対策部門の部長/CISOクラスに任せたからといって自分では理解しようとしないケースが目立つ。サイバーセキュリティ対策は技術課題なので、専門部署を作った、そこに任せてあるというわけ。これは全くの誤解で、自社の製品出荷やサービス提供が止まったり、お客様に迷惑をかければ最悪企業の存続自体も危うくなる。サイバーセキュリティ対策は経営課題なのだ。
 
 だからここでいう「文系も数学」というのは、経営者やその補佐クラスであるならば、文系出身でも数学その他デジタル技術を理解せよということではないかと思う。そこまでは欲しない文系学生にまで、微積分を強要しようと言う事ではないのだろう。
 
 ただこの話、詰めていくと新しい階層社会を作るようになるだろう。技術も経営も分かる層が突出し、その下にどちらか一方が分かる層が来る。どちらも認められない人は・・・発展途上国から来た外国人労働者との低価格労働受注競争にさらされるかもしれません。
 
<初出:2018.12>