Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

インターン制度の革新

 「就活ルール廃止騒ぎ」は、経団連は指針を示さず、政府・大学でルールを決め企業にお願いする形式に落ち着いたようだ。ある時点でカタストロフィを起こすような変化は日本社会は嫌うので、まあ今回はこの辺りだろうなと思う。これはあくまで「お願い」なので、手の早い(積極的なと表現すべきか?)企業なら1年生の時から目をつけてしまうぞとの観測記事も出ていた。

 
 入学したと思ったら夏休み前に同級生が「内々定」を貰っているというのでは世知辛い話だし、大学側は「学業に触る」と目くじらを立てるだろう。そこで注目されるようになったのが、インターンという形で企業にも学生にも相手を見定める機会をつくること。もちろんこれまでも、多くの企業で行われていたことだ。これを拡大する方向になるだろうと、多くの有識者は思っている。
 
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35669400R20C18A9TJ2000/ 

 僕自身は30余年前から後輩たちのリクルートを手伝うこともしていて、特にコンピュータサイエンス系の学生を企業のどういうところに配属するか、結構尽力したつもりである。そのプロセスで大学の教授陣とも話しをしたし、企業の採用担当者(総務部門)の意見も聞いた。さらには、米国西海岸の企業や大学の実態なども調べてみたことがある。その時に感じたのは、「インターン」の位置づけがまるきり違っていることだ。

 企業は特に年次などは気にせず、インターンを受け入れる。仕事内容はお手伝いやお試しではない、本物。例えば納入システムの開発の一部を責任もって担当するようなことだ。企業はインターン終了時に、その学生の業績について評定して大学に報告する。大学はその評定に従って「単位」を認定するのだ。そして学生は、「XX企業でシステム開発を担当し、Aの評価を貰いました。そのシステムは、YYで今も稼働中です」と就職活動の時に主張できるわけ。

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 これは学生を見極めたい企業にも、実戦経験を積ませたい大学にも、もちろん学生にもメリットのあるエコシステムである。特に優秀な学生で役に立つと見たら、企業は大学を中退して就職するよう求めることもある。有名なベンチャー起業家の相当数は大学を卒業していないとも聞く。学生時代に起業する人もいたろうが、中退して就職し自信がついたらスピンアウトしたという人も多かったろう。

 せっかく日本でもインターンが注目されるようになったのだから、この制度が「青田買い」につながると怒ってばかりいないで、ちゃんと仕事をさせ、単位を認定し、それを就職時のアピールに使えるような社会システムへの議論をお願いしたい。そういう話なら、強面の経団連も乗ってくるかもしれませんよ。
 
<初出:2018.10>