Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

制裁は「両刃の剣」

 「America First」のトランプ政権、対米貿易黒字の大きい国に片端からキバを剥いている。先月は鉄鋼・アルミの関税引き上げを強行、今は輸入自動車の関税を上げると脅している。関税はゼニカネの話だが、中国のスマートフォンメーカーZTEについては、米国企業との取引を禁止してしまった。

 
 理由としては、ZTEがイランとの違法取引をしたり米国政府に虚偽の説明をしたということだが、背景には安い製品をどんどん輸出してくる中国企業への怒りがあったと推定される。しかしここにきて、罰金(13億ドル)の支払いや経営刷新を条件に制裁緩和するという(ツイッターでの!)発表があった。
 
 
 習国家主席との話し合いがついたということだが、これも背景には米国企業側の陳情があったと思われる。ZTEは最終製品を製造販売しているが、半導体など部品の多くは米国企業から購入しているのだ。ZTEは事実上操業停止状態だが、困っているのは米国企業も同じである。

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 こういうグローバルサプライチェーンは、古いタイプのビジネスマンであるトランプ先生の想定を超えるものだったのだろう。米国企業が半導体などを製造している場所も、米国ではなかった可能性もあり統計値で実態を把握できなかったのかもしれない。ここまで国際経済が複雑な相互依存になっていると、どこかの国を叩こうとしても制裁が巡り巡って自国にも被害が及ぶ「両刃の剣」になる公算が高い。
 
 グローバル化に背を向けた米国人に支持されているトランプ先生だが、このトレンドは防ぎようのないもの。どんな人もこの波からは逃れられない。それを最初に、トランプ先生に学んでほしいものです。 
 
<初出:2018.6>