Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

偽ニュース取締法への危惧

 「Fake News」は、何もトランプ先生だけのケンカ売り言葉ではない。今やサイバー攻撃と並んで、偽ニュースの流布が大きな社会問題になりかかっている。例によってGAFA憎しの欧州委員会は、年内に偽ニュース対策をするよう彼らに要求したり、新しい規制を検討したりしている。

 
 そんな中で、一歩先に「偽ニュース規制」を法制化したのがマレーシアである。似たようなものとしては、中国の「サイバーセキュリティ法制」にもあるのだが、インターネットの自由を制限し実名でないとこれを使えないなどの規制を課している。マレーシアも、偽ニュースを流布したものに刑罰を課すという意味で、ある種のネット規制であることは確かである。
 
 この種の法制は表の話としてはまあいいのだが、これを拡大解釈すると政権側がいろいろなことができてしまうのが問題である。インターネット上でオピニオンを出すことはほとんどの国で認められた基本的人権だが、これに制限を加えることがこの法制では可能になるのだ。現に、マレーシアでは初の実刑判決が出ている。

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 マレーシアでは、国の在り方を決める総選挙が行われた。現政権に対しその生みの親とも言える前首相マハティール氏が挑むと言う骨肉の選挙戦で、マハティール氏の野党連合が勝利を収めた。しかし選挙中に、マハティール氏に対して偽ニュースに関する罪があるのではないかとする捜査を警察がしているとの報道があった。この話は選挙の結果に影響はしなかったようだが、選挙後に当選を取り消させることなどができるのなら、これは政府側の選挙妨害であろう。
 
 為政者が自分に都合のいいように扱えるのが、この種の法制であることを僕らは危惧する。一国の政治を左右できるようになれば、それは好ましいことではない。サイバー攻撃も偽ニュースの流布も問題なのはわかりますが、これらを言い訳にした為政者の勝手は許せません。
 
<初出:2018.5>