Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

南の経済、北の政治

 ドイツは連邦国家である。13の州政府が集まってできているもので、なかでも最大の州はバイエルンである。昨年衆議院議員会館で日独交流の会合に参加した時、「バイエルン州代表部」と書いた名刺を出されて驚いた。ドイツ大使館だけではなく、日本に州の「大使館」があるのだ。その人物曰く、

 
 ・ドイツ最大の州バイエルンでは、自動車産業や化学産業が繁栄している。
 ・フランスなどEUの他の国に比しても、工業の充実度は極めて高い。
 ・同じ工業立国である日本と、「Industry4.0」の時代により深い連携が可能だ。
 
 とのこと。
 
 「えー、待ってくれよ」と、正直思った。ただでさえ欧州委員会というのが国(ドイツ、フランス、イタリア等々)の上にかぶさっていて2重構造なのに、これじゃあ3重構造じゃないか。昔、バイエルンの隣、バーデン=ヴュルテンベルグ州コンスタンツに仕事で行っていた時に、バイエルン出身のエンジニアとベルリンっ子のマネージャーの対立を見ているので「南の人たち」の気持ちは分からなくはない。
 

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 そうしたら今度は「バイエルン・ファースト」という単語が目に入った。ここまで来たか、というのが感想。バイエルン連邦政府に楯突く直接原因は難民問題だが、根底には長年「北の政治」に虐げられてきたという意識があると思う。ヒトラーの空軍に革新をもたらしたメッサーシュミット109は、元はと言えばバイエルン航空機が開発したものであることが例だが、工業経済は南で興隆した。しかしそのゲインを北が搾取しているとの不満が彼らにはある。
 
 3~400年前は小国(というより都市国家)の集まりだったドイツ地区、今でも巨大都市は見当たらず100万人未満の中規模都市を中核にした地元意識が強いところだ。ポピュリズム政党が台頭する中、3重構造の政治運営はメルケル政権にとっても難題と言えるでしょう。
 
<初出:2018.7>