Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

シェア自転車システムの曲がり角

 最近方々の都市でみかける「シェア自転車」、東京・丸の内でも乗っている人が増えてきた。あの狭いロンドン、渋滞の酷いワシントンDC、バイクだらけの台北でも、シェア自転車が存在感を増している。市を挙げての自転車システムを最初に見たのはパリ。何度か行くうちにどんどん普及していくのがわかって、フランス人のエコ意識は高いなと感心したものだった。

 
 
 どころがその本家であるパリで、このシステムが危機にあるという。2007年に始めた時年間6,000台が壊れたことや、昨年は4カ月の間に60%の自転車が破壊・盗難・私物化されたことなど初めて知った。今年3月に仕事で短い滞在をして、パリのコンビニが捨てた食品を我先に漁る人たちを見て都市の貧困を感じたのだが、それと無縁ではないだろう。

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 より頑丈で盗まれにくいシステムを、また利便性を考えて電動自転車をという改善をしているようだが、これらは容易ではない。パリにも坂は結構あり、モンマルトルの丘の上からは自転車が消え、麓には溜まってスタンドが不足するということがしょっちゅう起きる。自転車を移動・再配置する専用車両も見たことがある。
 
 電動化はいいのだが、その分重く高価になる。整備にもよりコストがかかるだろう。壊されないよう頑丈にすると、これも重量に跳ね返る。重い車両を駆動するため、電池などが大型化するマイナスのスパイラルだ。これに運営会社のストライキが加わって、市民の不満が爆発しているという。ただでさえ公共交通のストライキで、市民は移動に困っているのだから。
 
 海外に主要都市にずいぶん遅れて「シェア自転車」を導入し始めた日本だが、先行した都市が問題点を明らかにしてくれるというメリットは得られそうだ。「追いつき追い越せ」という話ではなく、先行者をじっくり見て、より使い勝手のいいシステムを考えて行けばいいと思います。
 
<初出:2018.5>