Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ビッグマック指数の罠

 このところ外食産業の苦境を伝える報道が多い。「吉野家」の赤字、「鳥貴族」の値上げ後の不振など、症状はさまざまだが、比較的事業好調な「CoCo壱番屋」でも今月から値上げしている。消費者としては困った事態なのだが、東洋経済オンラインのこの記事は日本の外食は安すぎて「亡国」を招くと警告している。
 

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 ここでの主張ポイントは「ビッグマック指数」、肉・野菜・穀類などの原材料や店舗・調理法・人件費・決済システムなどの運用が各国で標準化していて経済の実力がバイアスなく比較できるものである。これによると、1位 スイス 6.81、5位 アメリカ 5.28、12位 ドイツ 4.80など上位には欧州・北米の国が並んでいる。28位 タイ 3.81、29位 アルゼンチン 3.73、日本はこれに次いで30位 3.59である。
 
 タイより安いのは問題ではないか、というのがこの記事の主張。しかるべき対価を払わずにいるので、経済そのものをシュリンクさせている。松下さんの「安い家電を水道の蛇口から」という企業理念や、中内さんの「良いものを安く」の考え方はもう古いと切り捨てている。
 
 確かにこのビッグマック指数の表を見ているとそんな気もしてくるのだが、仮にアメリカ並みの指数にすると、47%の値上げになってしまう。「富士そば」のもりそば310円は460円に、「吉野家」の牛丼380円は560円になる勘定だ。地方では320円の「牛めし」を販売している「松屋」のそれも470円だ。これは、消費者の生活実感として受け入れられないだろう。

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 そこで立ち止まって考えてみると、やはり為替レートのいたずらが原因にあると思う。僕は今でも消費者感覚だと、$1=75円だと思っている。単純に1$=110円から1$=75円になったとすると、日本のビッグマック指数は5.27になり5位のアメリカに迫ります。もちろん為替が変われば輸入物価など諸般のデータも変わり、一概にこうなるとは言えませんがこの方が実態には合っているように思うのですが。
 
<初出:2019.3>