古くはイラン革命でパーレビ国王が追われ、イラクのサダム・フセインが倒れ、イエメンやシリアの混迷も含めて中東地域は不安定になっている。先日は300名を越す死者を出したエジプトのテロ事件もあった。そんな中で、サウジアラビアだけには大きな混乱はない。
しかしその名前「サウジ家のアラビア」が示すように、サウジ王家に支配された「独裁国家」の面がある。まがりなりにも選挙で選ばれたサダム・フセインの方が、よほど民主的な国を作った。サダムはイスラム国家としては考えにくい「女性兵士」の部隊まで持っていた。
サウジアラビアは、これまで女性が自動車の運転ができない国だった。これに抗議した女性が、運転するさまをSNSにアップして騒動になった。それが改革の一環だろうか、自動車運転に許可が出たようだ。32歳と若い上に「剛腕」で知られるムハンマド皇太子が、石油に依存し働かない国民、権力に安穏とする王族、変革を嫌う宗教界の全てに挑戦状を叩きつけている。
実際働いているのは、外資系企業やフィリピンなどからの出稼ぎ労働者だけである。勤労している国民の多くが公務員だし、行政の非効率は目に余る。何かの申請に行ったら「明日来い」と言われたので、翌日行ってみると「本当に来たのか?常識のない人だ」と言われびっくりしたという。
そんな国を改革しようという皇太子には敬意を表するが、性急な改革はひずみをもたらす。日本が多くのエネルギーを依存している国だけに、混乱は困ります。本当に「油断」が来るかもしれないと危惧します。
<初出:2017.11>