Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

放送と通信の融合(後編)

 さらには米国中心のインターネット大手も堂々と参入、豊富なコンテンツやサービスをもって静かな革命を起こし続けている。業界関係者は程度の差こそあれ今の事態をうすうす感づいていたから、放送通信融合時代に自社は何をするべきか考えていた。しかしその時考えたことの半分くらいは実現しなかった。

 
 その最大要因は放送と通信の2つの分野に規制の相違があることだったようにも思う。小泉内閣時代、竹中総務大臣(現東洋大教授、未来投資会議規制改革徹底推進部会長)や前記大田氏(当時内閣府政策統括官、福田内閣で入閣)らも放送通信融合に向けた政策議論をしていた。しかしその当時の政策課題は大半積み残され、現在も内閣府等の会議では議論されているわけだ。

 よく話題に登るのは電波の利用、極めて基本的なインフラに近い部分の問題である。より有効な電波の使い方や、国際的に整合の取れた電波の割り当てを求めていきたいのだが、すでに時代遅れになったアプリケーションでも先住民のいるところでは割り当て変更にはずいぶん時間がかかる。地上波デジタルへの移行過程を思い出してみれば、その企画から遂行、衆知、広報にいたる大変な労力を求められることが分かる。この過程では「電波の地上げ屋」呼ばわりされたり「日本の電波は外国人に触れさせない」などとする国粋主義者に出会うこともある。

 

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 冒頭挙げた政治的公平性規制、外資参入規制の撤廃、上下分離の容認などは、インターネット経済下では当たり前のこと。ただ垂直統合型の放送業界を一気に水平分業にすると大混乱するというのも分からなくはない。時間をかけ、透明性を高くした議論が必要だろうと思う。

 ちなみにNHKの国内番組基準と民放連の放送基準が禁止している「サブリミナル放送」だが、通信の世界では禁じられていません。昔ATM(現金自動預け払い機)の新事業を考えている人に、ATMは放送機器ではないからサブリミナル広告を出せるよ、定期預金集めや個人ローン販売にでも使ったらとけし掛けたことがある。どうなったのでしょうかね?
 
<初出:2018.4>