Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

貴女には言われたくない

 ドイツ人には、ある意味ファナティックな国民性がある。原子力に対するアレルギーは世界一かもしれない。東日本大震災福島第一原発の事故を引き起こした時、あるドイツ系企業はBCP(事業継続計画)を発動、本社を関西に移した。米国大使館が日本にいる米国人に「福島第一から50マイル離れろ」と指示した話とはちょっと違うレベルの反応だ。

 

 日本に多くのカスタマーを持っているこのドイツ企業、後に「逃げたわけではない、万一のことを考えての措置だ」と言い訳に追われることになる。一方ドイツでは、事故から4カ月後に自国内の原発を全廃する法律が成立している。現実に、2017年にはすべての原発が停止している。
 
 これを可能としたのは、欧州全体で電力を融通しあう仕掛け「ヨーロピアン・グリッド」がそれなりに機能しているからだ。簡単に言うと、ドイツはフランス等の原発からの電力で支えられている面があるのだ。このグリッドも十分な柔軟性を持っていない。今回読んだ記事は、ドイツ連邦議会の副議長ロート女史が日本に「温暖化対策のため、日本は石炭火力全廃に向けてただちに行動せよ」との意見を述べたという内容。彼女は環境問題にファナティックな「緑の党」の党首でもあり、主張については驚くべきことではない。ただドイツという大国の議会副議長たる要職にある人物が、外国に向けて言うべき言葉とは思えない。
 

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 原発をすべて停止し、石炭火力も廃止に向かって動いているドイツでは、風力・太陽光などの再生可能エネルギーだけでは需要を賄えていない。上記のように、他国(の原発等)からのエネルギー供給が必要なのだ。原子力にしてもCO2対策にしても、自国だけ良ければいいという姿勢に見えてしまう。ましてやそれを他国に要求するとは・・・。
 
 ドイツ南部在住の日本人からのレポートに、ドイツの電気料金は首位のデンマークにもうじき追いつくほど高騰しているとある。「脱原発・脱石炭」をこれ以上推し進めれば、産業の空洞化を招きかねないと警告してもいる。ましてや中国や朝鮮半島、ロシアなどから電力供給を受ける設備が(今は)ない日本には、「脱原発・脱石炭」は難しいのが実情だと思います。
 
<初出:2019.2>