世界中のタクシー事業者の天敵であったUberに、このところいい話が少ない。昨年は自動運転技術開発に努めているとか、Uberドライバー開拓のために免許取得の支援をするとか、将来を期待させる記事が多かった。ところが今年に入ると一転、セクハラ問題に端を発した経営陣の不和、キーマンの辞任などが相次ぎ勢いに陰りが出てきた。そこにAlphabet傘下の相乗りサービス会社Lyftが急進してきて、本拠アメリカでもUber独走とはいかなくなった。
AlphabetとはGoogle等の持ち株会社で、事実上GoogleグループがUberを追撃してきたというわけだ。Alphabetは傘下にWaymoという自動運転技術開発会社も持っていて、Uberモデルから運転手を除いてしまうかもしれない可能性を追求するのだろう。これには既存の自動車産業も興味を示し、GMがLyftに巨額投資をしているとの報道もある。
デジタルという名前の破壊神、今やその権化であるGoogleがとうとうクルマ業界を本格的に侵食し始めたと考えるべきだろう。恐ろしいのはその資金力。最初はガレージメーカーだったかもしれない彼らが膨大なM&A資金を持ち、GMなどからも資金供給を受けるようになっているのだから、単にビジネスモデルがいいとか技術に優れているでは太刀打ちできない。
先日シリコンヴァレーで聞いた話だが、Googleだけではなく当地で名の通った企業はキャッシュをたくさん持っていて、いい企業・技術・ネットワークと見るや大金を積んで獲得することを厭わない。またその決断が極めて早い。良い先行モデルがあれば買収を試みるか、追撃体制を整える「強者の論理」が支配する世界である。さて、先行モデルのUberは逃げ切れるか?いずれにせよ、2~3年のうちには決着しますね、きっと。
<初出:2017.6>