Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

NAFTAの見直し論

 熱狂的な25~30%の支持層はゆるがないものの、半島の付け根の国と脅しあう以外ほとんど成果の上がらない半年を過ごしたトランプ政権である。16日から始まったNAFTAの見直し交渉で、成果を上げたいところである。メディアの注目するのは自動車、特にメキシコから完成車や部品が無関税で流入するのを止めさせたいというのが、トランプ政権の意思である。
 
 ただ、これはかえって米国の自動車産業に負荷をかけるものだとの指摘がある。下記の記事にあるように、NAFTA域内で部品の62.5%を調達したクルマなら関税がかからないという「原産地規則」を見直してこの数値をあげようとすれば、米国自動車産業の生産コストを上げるだけに終わるという。
 
 
 自動車産業のすそ野は広い。複雑にからみあった糸の塊のようなサプライチェーンで成り立ち、現在の諸条件でベストに近いバランスを保っているのだろう。大前研一のいう「民の見えざる手」によって、である。これを人為的に崩せば、米国内の雇用には逆効果になると専門家は警鐘を鳴らす。それでも強引に「公約」完遂に向けて突き進むのか、産業界はハラハラしながら見つめている。
 

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 IT/ICT政策で食べているものとしては、メディアのスタンスにも注文を付けておきたい。取り上げるのはもっぱらクルマ、その次に農業である。忘れてほしくないのは、デジタル(活用)産業のこと。棚上げになっているTPPの第14章、電子商取引にはデータの自由な流通を保証するという記述がある。以前米国関係者と話していたら、「NAFTAに現在ない、このような条項を入れるのが目的で行動している。これが入ってこその新時代のNAFTAだ」と息巻いていた。
 
 NAFTAの交渉は日本政府/産業界は見守るしかないのだが、少なくともメディアは成長産業としてのデジタル経済にもっと関心を示してほしいものですね。
 
<初出:2017.8>