Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

PKOでも復興支援でも

 イラク特別措置法に基づく自衛隊の復興支援活動について、当時の日報の一部が公開された。仕掛け爆弾で車両に軽微な被害があったとか、PTSDと思われる症状を訴える隊員のことが明らかになってきた。

 
 2004年当時のイラク液状化していて、主義主張を持ったゲリラや喰うに困った山賊などが跳梁跋扈していた。そんな中、湾岸戦争時カネは出したが人は出さず、プレゼンスが得られなかった日本としては、国際政治的に人的貢献の必要に迫られていた。陸上自衛隊を中心に、比較的治安がいいとされる南部サマーワ周辺でインフラ整備や給水などを行う部隊が編成され、交代しながら2年余の任務を果たすことになった。

https://mainichi.jp/articles/20180417/k00/00e/040/270000c

 初代の隊長が、現在の佐藤外務副大臣である。彼がTVのインタビューで「汗をかき、時には体を張って残した日報であり、活用・参照してほしい」と言っていたのは正論である。結果としてひとりの戦闘による死傷者も出さず、1発の銃弾も撃たなかったのは、僥倖であったと思う。現に同じエリアで活動していた他国の軍では、戦死者が出ている。

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 日報に「戦闘」という文字があるから自衛隊の活動は非戦闘地域だけではなかったと非難する野党や一部メディアには困ったもので、当時の小泉総理が「自衛隊の活動地域=非戦闘地域」と国会で答弁したこともあって、この赤裸々な日報は死蔵されていたのだろう。一種の「忖度」があったように思う。しかし今後の活動の参考にするためにも、平和でないところ(戦闘地域かどうかは知らないが)での活動についてのノウハウは、日本の自衛隊やましてや政治家を含む日本国民には少ないのだから、この日報は公開・活用されるべきだ。

 一部自衛官OBが「日報は機密だから非公開」というのは、「軍機」を盾に取った旧日本軍と同じ轍を踏むことだと思う。PKOでも復興支援でも平和でないところでの活動に危険が伴うのは当たり前、だからこそ装備もあり訓練も受けた自衛官に赴いてもらうのだ。自衛官の死者はなかったが、文民である警官に死者を出したカンボジアのようなことは望ましくない。

 実数は不明だが、自衛官の自殺は多いと聞く。これは米軍などでも同じことで、殺しても殺されそうになっても人間は精神を病むのだ。そのような犠牲を払って日本のポジションを高めてくれた人たちを、非難するような政治家やメディアには「喝!」です。
 
<初出:2018.4>