Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

順番が逆だったら・・・

 ミステリーには殺人事件がつきもの、100年以上前のミステリー(当時は探偵小説といった)を書くための指導書には、人の命が失われるという重大犯罪でこそ読者も真剣になるとチンケな犯罪の物語を戒める言葉も載っていた。しかしミステリーの大家で、あらゆる殺人方法に精通している人でも、実際に手を下して人を殺すということは容易ではない。

 
 これはむしろ医師の方が詳しいだろうが、人間はそう簡単に死ぬものではない。未解決に終わった「警察庁長官狙撃事件」では、殺傷力の極めて大きい,357マグナムのホローポイント弾を腹部含めて3発も命中させながら、犯人は國松長官を殺すことに失敗している。逆にあっけなく人が死ぬこともあるのだが、計画殺人を目指す者にとってそんな僥倖を期待するわけにはいかない。それで、あれこれ考えるわけだ。
 
 まあ所詮ミステリーはつくりものの世界だよね、と思っていたら、「夫を殺害する方法」をブログで公表していた作家が、本当に夫を殺害した容疑で拘留され裁判に臨もうとしているとの記事があった。
 
 
 関係の記事をいくつか読んでみたのだが、殺害方法についての記述は見つけられなかった。彼女がどうやって、虚構と現実の壁を乗り越えて実行に及んだのか、ミステリーマニアとしては興味あるところだ。逆に動機については、特段知りたいとも思わない。殺人事件ではまず配偶者を疑うのが常道、動機も2人にしかわからないことが多いからだ。

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 この裁判、どう展開するのか気になるところだが、今の時点の感想を言うと「順番が逆」ではないかと思う。まず殺しておいてから、後に「私はこうやって完全犯罪をした」と出版すれば、相当の人気を博したのではないか。アーサー・ウィリアムズという匿名作家が発表した短編「この手で人を殺してから」は、読後40年経っても記憶に残る作品である。ブロフィー容疑者はその2番手になれたかもしれないのに、残念です。
 
<初出:2018.9>