Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

皇帝のいない6月

 史上初めての米韓首脳会談が来月12日、シンガポールで開催されることになった。金委員長におかせられましては、せっかくですからお兄さんが亡くなったクアラルンプールにでも寄られればよろしいかと思いますが、無理は申しますまい。

http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44064308 

 冗談はさておき、今月2度目の訪中をした金委員長についてその乗機の映像が各国のTVに流れた。例えばこの記事にあるように、金委員長は飛行機や車、場合によっては船も乗り継いで国内外に出かけるらしい。イリューシン62型と思しき専用機の名前は「チャムメ1号」、決して「エアフォース・ウン」と呼んではいけないとこの記事は言う。劇的な南北首脳会談の時には、専用車を取り囲んで走る屈強な10名ほどの男たちの映像も見られた。

 さて板門店までは車で来ることも可能だった委員長だが、平壌板門店での米朝首脳会談が出来ないとなると、どういう移動手段を使うかが気になるだろう。中立国として候補に挙がっていた北欧の国、あるいは彼が留学経験のあるスイスは、イリューシン62では航続距離が足りない。もちろん途中で着陸して給油しながら行くことは物理的には可能だが、リスクを考えると避けたい。

 

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 中国大陸のどこかなら良かったのだろうが、これは米国側が中国の影響力を考慮して忌避したのだろう。 イリューシンの航続距離内に適当な「中立国」は見当たらず、結局シンガポールに落ち着いたのだろう。米国情報は「経済繁栄国家シンガポールを見せて核放棄させる」と言っているが、そんなのはあとで付けた話。


 さて肝心の首脳会談の中身だが、何が起きてもおかしくはない。どちらかと言えば冷静な金委員長が粘り強く「時間をかけた核問題解決プロセス」を主張し、これに対しトランプ先生がジレてキレるのが恐ろしい。まあ日本としては、決裂しても今年1月の状況に戻るだけ程度に達観して見ているしかあるまい。

 僕は米朝首脳会談が史上初だとして、もうひとつ初めてのことがあると気づいた。それは金委員長の外遊が世界に公知されたのが初めてだろうということ。父親の金正日も外遊日程が外国メディアに知らされるのは帰国後だった。一度は列車の進路で大爆発があり、数千人が犠牲になったとも伝えられている。予定を知られることを必死で隠しているわけだ。

 今度ばかりは「影武者」を使うわけにも行かないだろうから、金委員長は会談の日前後は祖国にはいないわけだ。これを全世界が知っている。さて「皇帝のいない6月」、この日に平壌で何かが起こるのでしょうか?

 

<初出:2018.5>