Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

スルガ銀行の光と影

 女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」倒産以降、スルガ銀行では続々と不都合な事態が発生している。先日の株主総会は当然大荒れ、非公開なのだが「責任とれ」の怒号が飛んだという話が伝えられている。しばらく前2,500円を越えていた株価が1,000円割れと、見る影もない。地方銀行の中では非常に積極的な経営をしている銀行と思っていたので、株価が1,500円を割ったとき「買いかな」と証券会社に打診した。返事は「まだ不都合なことが出尽くしたとは思えませんから、もう少し待っては?」というものだった。

 その観測どおり書類の改ざん事件などが新たに加わり、ある意味一安心である。静岡県は比較的優良な中小企業が多いところで、これらの企業を支える地方銀行も優良経営である。双璧は静岡銀行スルガ銀行。しかしこの両行、スタンスは180度違う。

 
 伝統的で、いかにも固い銀行のイメージがある静岡銀行に対し、積極的で新しいことに挑戦するのがスルガ銀行。20年ほど前に有名な外資系IT企業の日本法人を辞めた人が社外取締役についているのを見て、その積極性を知った。システム開発にも個性が現れ、それが過ぎたのかどうか開発を請け負った日本IBMと訴訟騒ぎまで起こした。

    f:id:nicky-akira:20190525160727p:plain


 銀行口座と言えば、通帳と銀行カードはつきもの。ここにもスルガの先進性は現れていて、まず通帳は、作らないのがデフォルトだった。確かに、2ヵ月に一度口座の入出金レポートは届く(紙orメール)ので、利用者としても通帳は必須ではない。銀行から見れば、郵送したとしても通帳管理コストよりも安いのだろう。ましてやメール添付やオンラインサービスなら、コストは非常に小さい。
 
 次に銀行カードだが、各行ICカード対応はしたものの普及に二の足を踏んでいた頃、真っ先にICカードを全利用者に配ってきた。磁気ストライプのスキミング被害が横行しても、希望者だけに限定していたICカード配布を全員にやってきたのはここが最初。ICカードはセキュリティ性と同時にコストが上がるのが難点だが、追加のいろいろなサービスが容易に展開できるので営業面では有利と見たのだろう。

https://www.sankeibiz.jp/business/news/180629/bse1806290630001-n1.htm 

 積極経営がオーバーランしてしまったかなという今回の事件、ついに「行政処分」のうわさも出始めた。昔某大手銀が金融庁の役人の前で書類を破り捨てるなど著しい監査妨害行為があったとして処分され、別の大手銀に吸収されるということがあった。今度もそういうことになりはしないかと心配している。新しいスタイルの銀行を目指していたことは正しかったと思うので、その考えが(他の銀行含めて)後退するのは面白くありませんから。
 
<初出:2018.7>