Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

プーチンさんの「Executive Order」

 トランプ大統領が機関銃のように乱射している大統領令(Executive Order)であるが、司法に待ったをかけられたものもありご本人が思っているように成果が揚がっているわけではない。いらだちを隠すこともないトランプ先生であるが、今週は新しい大統領令を出すぞと吠えている。まあ、誰も恐れも驚きもしていないだろうが。

 
 そんな中、あちらの国でも大統領令が出た。ロシアのプーチン大統領が発行したのは、「ウクライナ武装勢力が発行するパスポートなどの書類を、ロシア国内で有効とする」というもの。周知のように、ウクライナには親ロシア派と反ロシア派がいて、クリミア地方のロシア併合や東部地域での紛争の火種になっている。
 
 再三停戦が叫ばれているが、戦闘は断続的に続いていて見方によっては「内戦」と言えなくもない。ここで起きていることも、武力衝突か戦闘かと問われれば「どっちと言っても構わない」と応える人が多いだろう。日本の国会の論戦たるや、このように世界の常識を逸脱したものである。

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 さて親ロシア武装勢力は反政府勢力であるから、国家ではなくパスポート等を発行する権限は国際的に認められない。これを認めるということは、武装勢力を準国家と考える入り口だと思う。次には武装勢力が支配地域において「独立宣言」をし、東部の独立からクリミア同様ロシアへの併合というシナリオが見えてくる。
 
 トランプ先生と違い、(少なくとも本件では)議会や司法当局の制約を受けているわけもでないプーチン大統領がわざわざ「Executive Order」を出したのは、国内向けとは思えない。あきらかに国際社会に向けたメッセージで、クリミアだけで満足していないことを示したものだ。
 
 ロシア国内の景気は良くない。頼みの原油価格は少々持ち直したものの十分ではないし、経済制裁が堪えている。しかし、国内でのプーチン人気は絶大である。制裁を受けながらも「大ロシア」の復活に邁進している姿は、頼もしく国民に写っているわけだ。
 
 しかしロシアから見れば失地回復であったとしても、国際社会はそれを「侵略」と捉える。世界の盟主だったアメリカが内政で揺らいでいる今、プーチン大統領はもう少し揺さぶってみようということなのだろう。
 
<初出:2017.2>