ポリスマンを辞めたといいながら、オバマ政権のアメリカはシリアに介入した。その目的がぼくらにはよくわかっていない。一つには、アメリカのテロを仕掛けると公言するIS(イスラム国)の打破、もう一つにはアサド政権が自国民を殺しまくっていることへの制裁。後者は反政府/アサドの勢力を支援することだった。
古来戦略も作戦も、目標が複数あると結果は宜しくない。有名なのは「ミッドウェー海戦」で、ミッドウェーの占領と敵空母撃滅の両天秤をかけられた現場は混乱し、比較的大きな戦力を持ちながら敗れた。シリア問題も、その棋理に当っていると思う。ISと反政府勢力(これも決して一枚岩ではないが)は反目しあっているが、ISを叩けば反政府勢力だけでなくアサド/ロシアも喜ぶ。また反政府勢力に武器供与等すれば、アサド政権は困るがISにはラッキーなことかもしれない。
恐らく当時の米国にとっての最適戦略は、反政府勢力は無視してアサド政権を支援するロシアと(暗黙の)協同をしてISを亡き者にする、それからあとのことはその時考えるというものだったろう。米国民のアサドに対する義憤は理解できるが、あのような地域を統治するにはアサドのような狡知な手法も必要悪と認めるべきだった。
義憤にかられたオバマ政権と違い、トランプ先生はシリアで遊んでいるようにも見られる。突然イージス艦からミサイルを撃つようなパフォーマンスはするけれど一貫した戦略で動いているようには思えない。上記の記事にあるように、東グータだけではないシリア問題をこじらせてしまった責任は米国にもあると思います。
<初出:2018.3>