テルアビブ滞在中も、ニュースは東グータ地区の件がトップだった。イスラエルはもちろん欧州にとって、シリア情勢は足元についた火である。その注目がこの東グータという日本人には馴染みのないエリアに、今集まっている。もともと2012年の「アラブの春」で、この周辺の「独裁者」たちはつるし上げられた。アメリカすら手出しできなかった(しなかった?)大物、リビアのカダフィ大佐も終焉を迎えた。エジプト長期政権ムバラク大統領も、収監された。
残った大立者と言えばシリアのアサド大統領、父親の時代から統治期間を延ばしてきているのは西の「金王朝」といっても過言ではない。彼もしたたかな政治家/為政者であり、独裁政権を維持する能力に長けている。このような政権はアフリカ諸国などにはいくらでもあると言うが、欧州に近いこの国については僕らも報道で知ることが多い。
多分アメリカ政府/議会/市民も同じだったのだろう。アフリカの小国の独裁の情報は少なく、シリアのアサド政権が自国民を殺しまくっているという情報に怒った。例によって国連の制裁決議などを仕掛けるが、安保理では常任理事国ロシアの拒否権にあって決議はできない。では単独制裁をといっても、小なりとはいえ軍事強国であるシリアを占領できるほどの地上戦はできっこない。
隣国トルコは友好国ではあるが、シリア・トルコ・イラク国境のまたがるクルド民族問題があって、基地くらいは貸してくれても完全協力はしてくれない。トルコは、シリア紛争を機にクルドを自国内から追い出そうとする。そこにやってきたのがISというヤカラ。シリア国内な、アサド派とそれを支援するロシア、反アサド派、クルド族、ISが入り乱れるカオス状態になった。
ロシアは地中海で唯一の海軍拠点をシリアに持っていて、アサド政権を見捨てるわけにはいかない事情もある。地政学的条件から、全世界のポリスマンをやめたアメリカはここをロシアに任せるべきだとの専門家の意見はあった。
<続く>