Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

二つに割れる

 FBIが、ヒラリー・クリントン候補のメール問題を訴追しないと決めたと発表した。昨日は事情聴取したむねの報道があり、心配していたが杞憂に終わったようだ。二大政党から大統領候補が各々名乗りを挙げ、さてこれから一騎撃ちという時に片方が訴追されて脱落、事実上選挙なしで大統領が決まるという最悪の事態は避けられた。

 ただ、真相は藪の中である。以前、ロシア企業から「クリントン財団」に多額の寄付があって国務長官だったヒラリー氏がその便宜を図ったという疑惑報道を紹介したが、それが払拭されたかどうかはわからない。強硬に訴追すればトランプ氏に肩入れしたとの批判もありえたし、かといって放置すれば無責任と言われる。FBIも、早期の幕引きを願ったのかもしれない。ウォール・ストリート・ジャーナルは、ヒラリー氏が有権者の信用を失ったのは事実だとし、トランプ氏がこの点を執拗につつきまわすだろう、だからメール問題は終わっていないと述べている。

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 それにしても、異様な大統領選挙だ。最近はオバマ大統領がヒラリー氏に帯同して選挙戦を戦っている。まるで、オバマ対トランプの戦いのようにも見える。他党の候補を批判するくらいはあっても、現職大統領が同党候補に任期中に帯同するなどという話は記憶に無い。1年前はヒラリー氏圧勝と思われた選挙戦が、いかに泥沼化したかがわかる。

 民主主義なのだから、市民の意思は絶対である。その意思がここでも二つに割れている。民主党の予備選でも、ヒラリー氏対サンダース氏の二つに割れた。共和党の予備選はトランプ氏圧勝にも見えるが、底流ではトランプ対反トランプの対立があったろう。反トランプ派が一本化に失敗しただけのことだ。

 ペルーの大統領選挙も、まれにみる接戦になった。ケイコ・フジモリ氏のいさぎよい撤退がなかったら、泥沼化していたかもしれない。"Brexit" 国民投票も接戦だったし、今後の移民・難民を巡るEU諸国の対応、スコットランド北アイルランドの独立機運なども国論まっぷたつの公算が高い。

 目を極東に転じてみると、参議院議員選挙では「改憲勢力2/3をうかがう勢い」などと報じられている。二つに割れるという激しさではないようだ。それにしても、自民党改憲を前面に出した選挙戦をしているわけではないし、与党公明党の公約には改憲の文字はない。それなのに、2/3がメディアで大きくとり上げられるのはなぜだろう 
 
 改憲については自民党が試案を出しているとはいえ、どこをどう変えるという議論は十分ではない。衆参双方で2/3の議席を取ったとしても、国民投票を経なければ(改憲勢力としては)ゴールできない。まだまだ時間のかかる話とは思うが、いざ国民投票となったとき、日本も「二つに割れる」のだろうか。
 
 徳之島の選挙は島を「二つに割っての大騒ぎ」になるという。しかし、日本では小選挙区導入後も二大政党制にならず、かえって政党乱立の様相を呈している。この国で「二つに割れる」選挙や投票はあるのだろうか。投票後その影響は日本社会にどう及ぶのだろうか、怖いもの見たさで見てみたい気はする。
 
<初出:2016.7>