Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ロシアのふところ事情

 「2島マイナスα」などと伝えられる北方領土交渉の行方だが、ロシア側の強硬な態度が目立っている。姿形からして横柄なラブロフ外相は、「北方領土と言う言葉を止めろ」とおっしゃる。この方5年程前にオランダで開かれたサイバーセキュリティの会合で挨拶をされたのだが、他の登壇者が全員英語で話したのにひとりだけロシア語でまくしたて僕は最後の「スパシーバ」だけしか聞き取れなかった。

 昨年秋の首脳会合でプーチン大統領が「今思いついた。前提抜きで平和条約を結ぼう」などと発言したのも、ウクライナ紛争・クリミア併合・シリア内戦への関与などで各国から課されている経済制裁が効いてきているからに違いあるまい。最大の輸出品である原油の値段は決して安くはないのだが、往時の1バレル=$100のような価格には程遠い。手持ちのカネが尽きてきて、市民生活に直結する「年金改革」までせざるを得なくなった。このため支持率は30%台にまで落ち込んでいる。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/02/post-11747_1.php 

 一方でこの記事にあるようにシリアには多額の援助を予定し、混乱の極にあるベネズエラにも支援を開始している。それも人道支援ではなく、独裁政権の方にである。また「北方領土」やサハリンにも開発費を投じていて、これらは一般市民の納めた血税で賄われている。

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 プーチン大統領はコワモテの割には選挙が怖いようで、支持率降下でなんとかせねばという気になるように思う。だからこの記事も「軟化のきざしはある」と書いているのだが、それは難しいだろう。「超大国の幻想」を持っているのは大統領や政府なのではなく、市民なのだから。

 最近も、超大型の核魚雷「ポセイドン」の実験に成功したとの発表があった。こんなもの何につかうのだろうかと悩んでしまうが、自国内の「超大国の幻想」を鎮めるには適当かも知れない。米ソ冷戦は、ソ連の経済破綻で幕を下ろした。今のロシアももう少し待っていれば、苦境が深まって変化してくる可能性がある。北方領土交渉は、急がないのがいいと思います。
 
<初出:2019.3>