「何を寝ぼけたことを言っておるのか」と怒られそうな話だが、ブロードバンドこと高速インターネット環境が重要な社会インフラであることをあらためて思わせる記事があった。
http://jp.wsj.com/articles/SB11603922512965864473104583223002068033928
21世紀の始め、日本は政府のIT戦略として「ブロードバンドが軒先まで来ていて、つなごうと思えば直ぐにつながる世帯数」を目標にしていた。この目標は、いろいろな事業者・機関が自前で敷設した光ファイバーなどの設備を相互接続し「社会全体で共有・活用」することによって、計画時期に先立って達成できた。
国のIT戦略は、ブロードバンドは曳いたけれど使われていないから」と、ITの利活用に目標を移してゆく。これを手伝っていた僕らは「既にあるブロードバンドインフラをどう使ってもらうか」の議論ばかりしていたので、ブロードバンドは当たり前のもの、空気のようなものと思っていた。
この意識は、WiFiなどの無線インフラ、4G通信などの普及もあって変わることは無かった。インターネットにつながらない、つながっても遅いという問題は、発展途上国のものであって途上国支援の目標だという認識だった。それが先進国たる米国で、発展途上国並みの事態になっていようとは。
いや、問題の大きさは発展途上国をはるかに上回ると言ってもいいだろう。米国は東海岸・西海岸のを中心に、インターネット経済が非常に発達している。豊富で容量の大きなコンテンツが飛び交っている。ブロードバンドに取り残された地域では、同じ国・同じ憲法・同じ経済ルールでありながら経済活動を同様にはできないことになる。これは極論を言えば人権の平等を侵害するものではなかろうか。
とはいえ、この記事にいう数十兆円の負担は難しい。トランプ政権は鉄道や電力などのインフラ整備には高い関心を示しているが、もともと民主党よりのIT関連産業に対する知識や関心は十分ではない。このような支出をする可能性はゼロに近い。アメリカ人の中には、中央部の国土を両海岸を隔てているだけの邪魔者扱いする人もいるくらいだが、そこはれっきとした米国だし、市民も大勢暮らしている。
さて米国の中にある格差のひとつ(大きな方のひとつ)である地域差、この国はどう克服してゆくのでしょうか?
<初出:2017.7>