このところ、イギリス在住のロシア人やその家族に変死が相次いでいる。大富豪だったり、服役出所後の亡命者だったり、今度はアエロフロートの元幹部だった人も犠牲になった。2006年には元ロシア連邦保安庁幹部だったリトビネンコ氏が放射性毒物で暗殺された事件があったが、それを彷彿とさせるばかりか立て続けに起こっていることが気になる。
ロシアの大統領選挙中のことだったが、すでに外国に出ている亡命者等を急いで口封じしなくては選挙が危ないとも思えない。もちろん「裏切者に死を」という復讐説もありうるが、こう立て続けというのは理解できない。ある事件に使用された毒物は、旧ソ連軍が開発したものだとして、メイ首相はロシアを名指しで非難した。クリミア侵攻以来冷え込んでいた両国関係は、一気に危険水域まで達したようだ。
このシチュエーション、イアン・フレミングの”007”シリーズなどのスパイ物でも出てきそうな話だが、もっと遡って第一次世界大戦終結後の世界にも似ているかもしれない。大戦中にロシア帝国が共産主義革命によって倒れ、「ソビエト連邦」が生まれたころだ。
1920年「スタイルズ荘の怪事件」でデビューしたアガサ・クリスティーは、本格ミステリーは表看板でスパイ物が大好きだった。ポアロも時々スパイ戦に巻き込まれるし、トミー&タペンス夫妻は(割合ほのぼのとした)冒険を繰り返している。
クリスティーのデビューからもうじき100年になろうとしている。それなのに、ロシアはその時代に「先祖返り」してしまったのだろうか?それとも、習皇帝に孤立主義のトランプ先生までいるので世界中が1世紀逆行したのでしょうか?
<初出:2018.3>