Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

他国軍防護にあたっての武器制限

 22日の国家安全保障会議(NSC)で、平時や武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」の際に、米軍艦艇などを守る「防護」の運用指針が定められた。安全保障法制の改正のうち自衛隊法95条の対象が他国軍も含むことになったことから、運用指針を定めたものである。日本の防衛に資する共同訓練等を含む活動に従事する他国軍隊の艦船などを、武力攻撃に至らない侵害から防護することができるようになったわけだ。ただその場合使用できる武器の制限について、報道したのは2機関。

 産経新聞時事通信:必要最小限の武器使用
 東京新聞毎日新聞、日テレ、テレ朝:当該記載・放映ナシ

 必要最小限、というのは難しい表現だ。一番詳しく書いてあったのは産経新聞で、「認められているのは、相手の武器使用に応じた最低限の武器使用。集団的自衛権の行使により可能となる本格的な武力行使はできない」としている。これって、現場はどう判断すればいいのだろうか? 相手が7.7mm級の自動小銃しか使わなかったら、こちらも小銃だけ。相手が機関砲を撃ってきたら、こちらも。相手が76mmクラスの砲撃をしてきたら・・・とするのだろうか?

 ちょうど22日朝、15年前の奄美沖で海上保安庁の巡視船群が北朝鮮のものと思しき工作船を追撃した時の乗組員のインタビューが放映された。あの時は巡視船が20mm機関砲を威嚇射撃、後に船体射撃して停船させたが、相手も小銃で反撃し接近しすぎていた巡視船に3名の負傷者が出た。相手はロケットランチャーまで撃ってきたが、荒波の上では狙いも定まらず命中しなかった。もし命中していたら沈没させられたかもしれない。

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 この時の巡視船の対応は、最大火力でもって最初に攻撃するという合理的なものだった。相手に合わせていては、守れるものも守れない。この報道は、政府から出たものか報道機関による着色か、いずれにしても国民に対して実態を糊塗し、現場に対して過度の負担を求める困ったものだと思う。

 ちなみに自衛隊法95条は「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる」とあり、正当防衛と緊急避難の場合を除いて「人に危害を与えてはならない」ともある。これなら、現場はなんとか対応できそうだ。どうしてこのように発表もしくは報道してくれなかったのだろうか?

 
<初出:2016.12>