Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

法曹ビジネスの行方

 大手法律事務所である「アディーレ法律事務所」が、不当な宣伝行為を5年も続けていたということで、鋼紀委員会から「懲戒処分」を受けたと報道されている。その内容はというと、「過払い金請求の着手金今から1ヵ月は無料にする」との宣伝を1ヵ月どころか5年続けたというもの。

 
 
 「今だけここだけ、あなただけ」なのに、5年もやっていれば不当表示に決まっている。具体的にどのような処分を受けたかわからないが、今も派手なHPは残っている。過払い金請求でGoogle検索するとこの事務所のHPが最初にでてくるくらいで、過払い金請求事案はやめられないようだ。
 
 過払い金請求というのは、消費者金融などで利息等を払い過ぎたことが判明した場合これを返済してもらうための請求である。専門家によると、弁護士業務の中では初歩的なもので、新米弁護士でもさばくことができる種類のものらしい。
 

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 背景のひとつは、2010年6月の貸金業法出資法改正で、いわゆるグレーゾーン金利が撤廃されそれ以前に不当に高い利息を支払っていた消費者金融等の利用者に救済の道が啓けたこと。つまり金融事業者から、払い過ぎていた金利分を返済してもらえるようになったことである。とはいえ素人が金融事業者に個別交渉するのは難しい。そこで弁護士センセイの出番とあいなるわけ。
 
 もうひとつの背景は、1999年から始まった司法制度改革。弁護士がゴロゴロいる米国に比べ、弁護士費用が高い・裁判期間が長い・裁判所が行政よりなどの批判に対して、いろいろな改革が示された中に、弁護士の数の増加があった。法科大学院が設置され司法試験合格者を増やす施策を進めた結果、粗製乱造弁護士が目立つようになった。そんなイソ弁クンでも、なんとかこなせるのが過払い金請求業務だった。
 
 多くの弁護士を抱える大手弁護事務所ほど、当然のように資質・能力が十分ではない弁護士センセイの数(比率ではない)は多い。必然的に過払い金請求業務は大手でも奪い合いになり、誇大広告もやむなしとなったのだろう。
 
 最近司法試験合格者は減る傾向にあり、法科大学院は出たけれど試験に合格できないという話も増えてきた。日本を訴訟社会にしようとした「改革」なのかもしれないが、少し無理をし過ぎましたかね。
 
<初出:2017.5>