Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

蘇ったゴリアテ

 ダラス銃撃事件の続報によれば、使用されたのは(またも)AR-15だった。アーマライトことM-16の民生用のものである。ゴルゴ13の愛銃といえばわかりやすいだろうか。以前、AR-15の使用弾丸は5.56mmNATO弾で、傷付け戦闘力を奪う目的のものだと書いた。しかし、ゴルゴ13を引用するまでもなく頭部など急所を直撃すれば殺すこともできる。あらためて、このような凶器が普通に市井で売られていることに驚く。
 
 今回は、5名の警官が犠牲になった。犯人は「新ブラック・パンサー団」の一員だったらしい。このような団体は、映画や小説の中でしかお目にかからないが、本当にあったようだ。KKK団という白人優越主義(過激)団体が有名だが、その対抗勢力らしい。犯人には従軍経験がある上に、新たな訓練まで受けていたという。防弾チョッキを着て、移動しながら銃撃を加えたらしく、いわば "One Man Army" を実践したということ。この強敵に対し、治安部隊が用いたのが「ロボットが運ぶ爆弾」だった。その仕様などは下記にくわしい。
 

    f:id:nicky-akira:20190512102242p:plain

 形状は異なるが、第二次大戦でドイツ軍が用いた秘密兵器のひとつが「ゴリアテ」といい、今回のものに似た使われ方をした。ゴリアテとは旧約聖書に登場する巨人のことで、どうして豆(無人)戦車にこのような名を付けたかはわからない。
 
 ヒトラーは大きな強いものを好み、88mm対戦車自走砲をナースホルン(サイのこと)と名付けたように、重戦車にティーゲル(虎)、中戦車にパンテル(豹)の名を冠した。その流れかどうかは知らず、巨人の名を持つ爆薬搭載車両は、火炎放射器などと共に突撃工兵の装備兵器となった。
 
 当初は、搭載爆薬を目標まで運び、爆薬を設置(投下)して戻ってくる運用が考えられていたものの、有線誘導ケーブルが切れたり、溝で立ち往生するトラブルが頻発して結局は「自爆兵器」になってしまった。それは今回の "Andros F5" の運用も同じだった。高価な兵器ではあるが、兵士(今回は警官)のリスクを考えると、手っ取り早く吹っ飛ばしてしまった方がいいという判断だろう。
 
 しかし、この「蘇ったゴリアテ」がダラス警察が使えるところにあったというのが重要である。たまたまあっただけなのか、それとも「戦場の無人化」が進んで国内にまで配備されていたのか?そんなに米国は危険な国になってしまったのかと、、考えさせてくれるエピソードだった。
 
 また、ゴルゴ13なら、、この現代のゴリアテをどう始末しただろうか。
 
<初出:2016.7>