ハーバード・スクェアからチャールズ川に向かう道路の名前は「JFK Street」である。ハーバード大ケネディ校にその名を遺す悲劇の大統領は、ボストン/ケンブリッジのそこかしこに足跡も残していた。JFK Streetがチャールズ川を渡るところには、その名を冠した公園もあって市民が散歩やボール遊びをしている。
チャールズ川では、数人乗りのボート競技の訓練をやっていた。それほど広くない川幅だが、ゆったりした流れのように見える。川を下っていくと、北側にマサチューセッツ工科大学(MIT)のビル群が見えてくる。少し川幅も広くなって、小型のヨットやプレジャーボートが係留されている。
そして河口に近づくと、小型の古めかしい船を係留した博物館があった。これが「TEA Party」博物館。アメリカ独立せんそうの引金になった事件を記念して整備されたものだ。
当時のアメリカ(といっても東海岸の一部だけだが)はイギリスの植民地であって、英国議会に代表を出すことはできないのに、税金だけはかかるという状況だった。有名な「代表なきところに課税なし」の言葉と共に、ここでお茶を摘んだ輸送船を相手に独立派が蜂起したのが、「TEA Party」騒動の由来である。
博物館の入り口には、当時の扮装をしたボランティアが愛想よく博物館へ誘ってくれたが、残念ながら寄っている時間はない。この「TEA」は文字通りお茶の意味だが、、昨今の共和党「TEA Party」は、ちょっと違う。
Tax Enough Already = TEA
というのがその意味で、もう十分税金を払っているからこれ以上払いませんよ、むしろ減税してよ、ということ。そもそも共和党は小さな政府、民主党は大きな政府指向であるが、このところの政権争いで有権者へのサービス合戦が劇化して、大きな政府か/より大きな政府かの選択になっていた。共和党の私費部がこれに反旗を翻したのが現代の「TEA Party」である。
例えばオバマケアであるが、これによって保険に加入できる人は10年間で3,100万人増え、加入率は83%から94%に上昇すると言われている。究極の福祉政策で、かつてクリントン政権で導入できなかったものをオバマ政権で実現したものである。一方、10年間の国民負担は1兆ドルに近い金額になるともいう。
まだもめているようだが、トランプ政権ではオバマケアを廃止、その財源でメキシコの壁を作ったりウォール街の減税をしようとしている。この流れは、例えトランプ政権が倒れても続くように思う。アメリカ市民は重税感にあえいでおり、民主党の「もっと大きな政府」よりは、「大きな政府」でいいと思っている人は少なくないからだ。古都ボストンを歩きながら、そんなことを考えていました。
<初出:2017.6>