Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

デジタル屋が見た米中対立(後編)

 かくも大きな国が違う価値観で存在するようになってしまい、危機感を持った米国が今回は中国包囲網を敷き始めたのだろう。しかし中国が巨大な市場であることも確かで、日本政府や企業はどうすべきかというのがいろいろなところで議論され始めた。中国通の人たちは、

・4,000年の歴史の中で、19世紀末からの短い期間中国は欧米の後塵を拝したものの、21世紀には本来の「世界覇権の国」に戻ろうとしている。


・今知的財産を不当に入手していると非難されるが、かつて羅針盤や火薬、製紙などの技術を盗んでいったのは欧米ではないか。


・現代のシルクロード「一帯一路」を形成するのに過剰な貸付をしているというが、この手法は以前からやっていたことでもあり合法だ。

 などと主張する。そして、中国のどの行為が欧米特に米国の怒りを買ったのかわからないという。僕は自分は決して「反中国」の立場に立つものではないと前置きして、デジタル経済の分野で米国が怒った理由をこう述べた。

・データの自由な流通は、世界経済を発展させる重要な要素。

 

・しかし中国は「Great Fire Wall」を立てて、欧米とは別のインターネット経済を作って閉じこもってしまった。

・世界でひとつのインターネットがあるべきで困った事態だが、それなりに大きな規模であり「もうひとつのインターネット」として仕方ないとも思っていた。
 
・しかるに(南シナ海の人工島同様)、中国のインターネットサービスが「Great Fire Wall」を越えて進出し始めた。
 
・一方「Great Fire Wall」のなかへのアクセスは制限されたままだ。

・進出するなら外部からのサービスも受け入れるべきで、「Great Fire Wall」は撤廃するのが当たり前。
 
・サービスは出てくるしデータは「Great Fire Wall」の内部へ吸い込まれる。その逆はできないでは、双方向性が成り立たない。

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 重要インフラやその関連産業だけでなく、中国政府がインターネット関連産業への関与を強めていることはすでに述べた。BATJも「国家的企業として市場をゆがめる」存在になりつつあるのだ。今週末からはG20の本番である。再び米中対立で会議の成果が吹き飛ぶことも予想される。さらに、来年のG20議長国は日本であり、日本でのB20は3月に東京で行われると聞いている。その時は本当にB19になってしまうのでしょうか?まさに「太平洋波高し」の印象ですね。
 
<初出:2018.11>