Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

見よ落下傘、空に降り

 1月の三連休(成人の日からみ)は、いろいろな初仕事がある。祝賀イベントでもあるのだが、これもそのひとつ。習志野の第一空挺師団を中心とした、「離島奪還作戦」の訓練である。昨年防衛大臣に就任した岩屋大臣が「多次元統合防衛力強化」の訓示を行ったと、この記事にある。

 
 
 冷戦時代の名残で、日本の防衛力は北に重点が置かれていた。北海道に着上陸するソ連軍を仮想敵としていたからだが、徐々に軸足を南方に移している。このためソ連お得意の「重戦車を並べて踏みつぶしに来る」相手ではなく、島嶼占領を意図する海兵隊的なものを相手取る戦力に移行しつつある。その象徴が水陸機動団なのだが、従来型の戦力である空挺部隊との連携は欠かせない。
 
 本格的に空挺部隊が実戦投入されたのは、第二次世界大戦。初期の欧州戦線で、ベルギーのエバン・エマール要塞をドイツ空挺部隊が奇襲したのが最初のように思う。ドイツの空挺部隊はその後クレタ島攻略戦に成功するも、甚大な被害を受けて以後の大規模作戦はできなくなった。
 
 日本軍も開戦劈頭、インドネシアの油田地帯(例:パレンバン)の攻略に「空の神兵」と後日呼ばれる空挺部隊を投入、油井を破壊するいとまを守備兵に与えず占領に成功している。余裕があったのか日本軍はこの記録映画を作り、国民の戦意高揚に役立てることもしている。
 
 空挺部隊は、長所短所のはっきりしている戦力だ。機動力は恐らく最高で、敵前線のかなり後方にでも奇襲攻撃をかけられる。一方持久力は、補給が難しければ極めて小さい。仮に補給できたとしても重装備を持たないから、ソ連の重戦車群や中国の人海戦術を食らえばひとたまりもない。

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 もうひとつ空挺部隊への懸念をいうなら、内戦時の動向だろう。精兵なので1対1でこれに対抗できる部隊はいない。仮に軍のクーデターが起きるとすれば、その国の空挺部隊が反乱軍に加わるかどうかは大きな要素になる。霞ヶ関・永田町界隈を制圧するシミュレーションをした作家もいたが、この中で「習志野の1空はどうなっている?」と指揮官が最初に問うシーンを覚えている。
 
 とはいえ年初の訓練は、米軍の特殊部隊も交えてうまくいったようです。観衆も1万人ほどあつまったようですし。仮想敵になりつつある韓国にもある意味プレゼンスを示せたでしょう。なにより、空挺師団の隊員のみなさんには、降下訓練参加のボーナスが(お年玉として)支給されますしね。
 
<初出:2019.1>