「持つものと持たざるもの」の分断劇ではあるが、今回の対象はカネではない。いかにもアメリカ社会らしいのだが、それは「銃」である。昨年ラスベガスでは、単独犯としては記録的な犠牲者を出した銃乱射事件があったばかり。フロリダの高校でまた銃撃事件があり、17名もの命が失われたという。このような事件は全米で毎月のように発生している。
多くの場合、犯人は周到に準備し複数の銃、それも殺傷力の高い軍用ライフルを用意している。ラスベガスのケースなどは、固定脚の上に銃をマウントして安定した銃撃を続けられるようにしたという。フロリダの事件ではAR-15(米軍制式のM-16と同系列)が使われたという。弾倉には20~30発しか入っていないが、連続発射速度は900発/分に達する。小口径の5.56mmNATO弾を使うので、有効射程は300mほど。それでも固定脚にマウントすれば、500mまでくらいは伸びるかもしれない。
全自動/半自動切換え式の自動小銃で、ルーツはナチスドイツの突撃銃MP-44にあると言う。少し小さめの実包で携行弾数は増えるし、銃自体もコンパクト。それでも短機関銃の拳銃弾よりは破壊力/貫通力が高く、市街戦などでは重宝された。
ボルトアクション・半自動ライフルより速射性に優れ、短機関銃よりずっと射程や威力のあるMP-44をもとにソ連はカラシニコフAK-47系列を開発したし、イスラエルのガリル突撃銃も似たスタイルである。いずれも歩兵の戦場を面で支配するための、自動火器だった。そんなものが街中にありふれていることは、日本人には理解できない。ましてやそれを高校など教育現場で撃ちまくるとは・・・。
<続く>