Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

新しい「おもちゃ」

  通常兵器として最強の破壊力を持つと言われる「GBU-43/B」(大規模爆風爆弾)が、アフガニスタンで使用された。実戦で使われたのは初めてと思われる。実験映像がTVに流れたが、キノコ雲にも似たものを吹き上げている。ただ実際どのくらいの爆発規模(xxキロトンとか?)かは報道されていない。


 兵器としては以前から使われている「デイジーカッター」の後継にあたるものだという。デイジーひなぎく)はその名にも似合わず強靭な茎を持っていて、切り倒すには労力がかかる。そんなデイジーすら根こそぎ切り倒す破壊力を持っているというのが名前の由来。かつてはデイジーカッターGBU-43/Bも、燃料気化爆弾ではないかと考えられていて、そんなものが登場する小説もあった。

 燃料気化爆弾とは文字通り爆発物が気体となって地表から地下に浸透し、一気に爆発(燃焼、酸化)するので衝撃や高温プラズマの他に酸素を奪って生命体を滅ぼすというのが特徴である。アフガニスタンの地下トンネルに潜むビン=ラディンを、これで窒息死させるというストーリーの小説だったと記憶している。

 アフガニスタンの報道は最近あまりないが、泥沼戦が続いていることは間違いないだろう。かつて大英帝国がつまづき、ソ連邦崩壊のきっかけとなった国だ。古くはアレキサンダー大王の東征もここからインドまでが精一杯で、それ以降文明の十字路として数々の戦乱に明け暮れていた地域である。戦うDNAを持った人種・種族しか生き残っていないと評した人もいた。

 ISISが跳梁跋扈するのは当たり前で米国にとっても問題のエリアだが、だからといってGBU-43/Bを落として解決する話ではない。先のシリア空軍基地への攻撃は「禁止されている化学兵器を使用したことに対する制裁」というそれなりの理屈はあったのだが、今回はそのような理由も発表されていない。要するに「持っていて、まだ使っていないから使ってみたい」ということなのではないか。

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 核ミサイル開発を続ける北朝鮮への警告だとする報道もあるが、その見方は好意的過ぎるように思う。シリア空軍基地攻撃にしても、本当に化学兵器がシリア軍によって使われたのか調査することやシリア政府を糾弾するプロセスをすっ飛ばして行われた。このような行動様式では、核ミサイルを「新しいおもちゃ」として喜んでいる誰かさんと差が無いことになる。中国政府が「正面衝突しそうな2つの列車」に朝鮮半島情勢を例えているが、幼児的な2国を見ているとその比喩は正鵠を射ているように思う。
 
<初出:2017.4>