Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

やってきた「想定事態」

 2~3年前、集団的自衛権の議論の中でどういうシチュエーションで集団的自衛権行使が必要になるのか、激しい議論があった。政府側がいくつかのケースを示したが、野党や一部メディアはそのケースは非現実的だとか、個別自衛権の範囲で対処できるなどと反論した。

 
 その中に同盟国艦艇防護というのがあって、紛争当事国から在留日本人を救出する途上の同盟国艦艇を攻撃してくる物に対して、攻撃を加えて同盟国艦艇ひいては在留日本人を守るというものがあった。また、同盟国艦艇に攻撃が加えられた場合、これを阻止できるのが海空自衛隊だけだった場合は阻止(ミサイルを打ち落とすなど)しなくてはいけないというものもあった。
 
 ケーススタディとしては存在している「想定事態」だが、なかなかそういうシーンは来ないと多くの人たちが思ったことだろう。それが、ひょんなことから現実化しようとしている。米朝間の緊張が口先だけとはいえエスカレートしていて、米軍の主力基地であるグァム島にミサイルを4発、島根県高知県などの上空を通って発射することを計画中だと、かの国が言い出したのだ。

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 グァム島を包囲するように射撃する、とかミサイルの数・ルートなど計画中にしては仔細のご説明をいただいているわけだが、その結果日本上空でこれを迎撃する機会が防衛省に生まれている。
 
 
 安全保障法制改訂のおり、集団的自衛権行使の要件に加えられた「存立危機事態」にあたるという議論もあって、自衛隊PAC-3を中国地方・四国地方にも配備する。
 
 実際にミサイルが発射された場合には、存立危機事態であり阻止できるのは日本だけだとして集団的自衛権行使に踏み切る構えだ。ミサイルが撃たれてしまった時、いくつかのケースを想定しなくてはいけない。
 
(1)発射がかの国の思惑通り飛ぶかどうか。4発のうちいくらかがあらぬ方向へ飛んだり失速して日本に落ちることもあるかもしれない。
 
(2)思惑通り飛んだとしても、その思惑が「包囲射撃」という近海を狙った威嚇なのか、本当にグァム島を狙ったものなのか?
 
(3)まさかと思うが、核弾頭や細菌兵器などを搭載しているかどうか?
 
 まともに飛んだとして、自衛隊PAC-3を撃つだろう。4発来たとしてそのうちどれだけを落とせるだろうか。また残りをグァム(やひょっとして沖縄も?)からの迎撃で落とせるかどうか。落とせたとして、その軌道からかの指導者の意図が威嚇か実戦かわかるかどうか。例え威嚇としても、ミサイルが実際に撃たれれば悲劇は避けようがない。そうならないことを祈りますが、備えもしなくてはいけないでしょう。
 
<初出:2017.8