田舎に生まれた僕は、決して裕福ではなかったけれど遠くまで続く田園風景の中で育った。夏は暑く、冬は雪が膝まで積もることもあるところだった。親父が園芸好きだったので、生垣はツゲ、庭の真ん中にはマキの木、何本もの松が植えられていた。鉢植えもサツキや松が数多くあった。
そんな中で冬になると広くない玄関の一角に入れていたのが、大きなアロエの鉢植え。こればかりは0度を下回ると枯れてしまうので、寒い時期には屋内へ避難させていたのである。アロエは別名イシャイラズと当地では呼ばれていて、葉(アロエベラ)は切り傷に当てたり、シップで使ったり、食用にして整腸に供することもある万能薬だった。
そういう用途に葉をむしってしまうのだが、当家のアロエはすくすく育ち、ある年の暮れに見たことがない突起を伸ばしてきた。その先端が徐々に円錐形に膨らんできて、赤く色づいた。ある日、それはいくつかの赤い筒状のものになって開いた。花が咲いたのである。画像は伊豆地方で撮ったものだが、温暖な地域ではアロエは雑草のように道端で育ち、冬に花を咲かせている。
伊豆急で下田まで行って街を散策していて、ひときわ大きな塊になった群生アロエに遭遇したこともある。温泉地では湯が噴出しているところの周辺に、アロエが集まって花を咲かせているのを見かける。温かいと気分よく咲くらしい。