Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

NEDO助成金詐欺疑惑(後編)

 もうひとつの問題は、助成金を出した側にあるような気がする。今回の事件の対象ではないスーパーコンピューターを例に取るのはもうしわけないような気がするが、例の「2番じゃだめなんですか」という有名なせりふがあるので引用させてもらおう。スーパーコンピューターというのは高速演算をする機器である。普通のコンピューターが乗用車とすれば、F-1レーサーにあたる。

 
 かつてコンピューターの性能を競っていた狭義のICTベンダーにとっては、次世代技術のプロトタイプであると同時に世界にみずからの技術力を誇示する宣伝材料だった。パソコンなど家電に近いものを除けば、コンピューターはあくまで特殊機器。専用のオペレータにかしづかれて、空調の行き届いた部屋に安置されていたころの話である。
 
 しかし半導体技術等の向上で、パソコンをたくさんつなげればスーパーコンピューター並みの性能が出るという実験もできるようになった。そもそもコンピューターの計算速度は、すさまじい勢いで向上するため計算性能不足を意識することが減ってきた。例えば、初期のコンピューター「ENIAC」に対し、「i-Phone7」は4億倍の浮動小数点演算能力を持っている。
 

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 狭義のICTベンダーがかつてほど収益を挙げられなくなったこともあって、各社は実質的にも宣伝効果としても魅力が減った「F-1」から撤退していったのである。そこに「1番でなくてはならない」という人たちがでてきて、政府からお金を引き出そうとした。民間が自助努力でできないなら、できそうな人に「公助」を与えようというわけ。このことそのものには(僕の払った税金が使われたとしても)あえて反対はしないが、今後も日本の産業のためになる投資だったかどうかは疑問がある。これが今回の疑惑の隠れた原因だと、僕は思う。
 
 確かに隣国は膨大なR&D投資をひねり出し、産業強化を図っている。しかし13億人の国と1億人の国ではやるべきことが違うようにも思う。このあたり、今回の反省含めてちゃんと議論をすべきでしょうね。
 
<初出:2017.12>