新聞・TV等各メディアが「スパコン助成金詐欺」と書きたてていることには、少しコメントをしておきたい。現時点での容疑は、メモリーデバイスに関する助成金詐欺容疑である。このデバイスは、同社(社長)を有名にしたスーパーコンピューターに使われたものではない。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24265320V01C17A2CC0000/
まだ捜査が入ったばかりで真実は見えてこないが、現時点では2つの問題を指摘しておきたい。ひとつは「PEZY Computing」の齋藤社長のスタンスである。彼はTVのインタビューに対し「米国では1つの成功をするのは当たり前、本当の起業家は次々に連続して新しい事業を興す」と言っていた。米国ICTベンチャーに、この傾向があるのは認める。小さな事業を興し、これを売却して次の事業、さらに次ということをしている人はいる。イーロン・マスクが本当にやりたかったのは宇宙関連事業、しかし一足飛びにそこに行く前にPayPalやテスラで地固めをしている。
しかし何社か興したという人の話を聞くと、失敗の連続で再チャレンジを重ねていたり、いろいろやって潰しはしなかったが大きくはできなかったと言う。MicrosoftやAppleも基幹路線は変えないで、事業を拡大してきた。洋の東西を問わず「一所懸命」というのは(大)成功の要件なのだ。ただでさえベンチャー企業は人材不足、有能な人は限られているから戦線拡大に耐えられる限度というのを経営者はわきまえなくてはいけない。
今回の事件、スーパーコンピューターでは成功したが別に立ち上げようとした事業で、こういう欠陥が露呈したのではないかと推測する。ひょっとするとスーパーコン担当部署の成功に焦ったメモリー部門の勇み足だったかもしれない。結局、経営者として十分なガバナンスができていなかったわけだが、その原因はインタビュー対応の言葉にあると思う。
<続く>