Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

憲法9条下での航空母艦

 自民党の安全保障調査会の会長中谷議員は、元防衛大臣自衛官の出身であり、防衛大臣としては適材適所の人だったと思う。現在の小野寺大臣も適任だと思うが、その前の女性大臣については疑問符が付く。内閣改造で、この女性に大臣職を奪われた時、中谷氏は涙した。その中谷会長がとりまとめた、防衛大綱の改訂と中期坊策定に関する提言骨子の中に、「多用途防衛型空母」という単語がある。

 
 
 航空母艦という艦種は、第一次世界大戦での新兵器だった軍用機が急速な発展を見せたところから生まれた。当初は偵察用で、偵察機を四方に飛ばし敵艦隊の位置や規模、動きなどを探って艦隊決戦を有利にするなどの用途が考えられていた。その意味で、飛行船(例:アメリカ軍のアクロン級)と競合したこともある。
 

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 しかし航空機の威力が増してくると、艦隊防空の必要性が増し戦闘機を積んで艦隊に1隻随伴するという用途に使われ始める。さらに爆撃機雷撃機の能力が上がって、空母を集中運用した打撃力が使えるようになった。「多用途防衛空母」というのも、F-35に代表されるステルス艦載機の能力向上による発想であることは確かだ。小型の艦船でも、このように強力な垂直離着陸機を搭載すれば無視出来ない戦力になる。日本の軍事力強化には、非常に有効な手段である。
 
 しかしこの名称も、レトリックである。防衛型といっても、攻撃力が無ければ戦力足りえない。それをぼかすのが「多用途」という言葉なのだろう。攻撃型空母と言えば、憲法9条の抵触するとの批判は避けられないとの配慮だろうが、実態は攻撃/防御は表裏一体のもの。戦力に変りはないのですから。
 
<初出:2018.4>