Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

使われない兵器

 PKOに「駆けつけ警護」任務などが付与されることになり、国会前で反対デモなどが起きている。メディアは「武器使用、新局面」と報じた。確かに、これまで自衛隊の兵器は人を相手に火をふいていない。駆けつけ警護は、事実上の救出作戦だから、対象者に脅威を与えている勢力を排除もしくは牽制しなくてはならない。当然、その勢力に向けて武器を使用することになる。

 
 ある政党は、「自衛隊が殺し、殺されるようになる。それでいいのか」と情緒的な主張を繰り返しているが、少し視点を変えて、兵器の立場で「武器使用」のことを考えてみたい。そもそもどのような道具も使われなければ意味がないし、使ってみなければ利点/欠点もわからない。

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 当時の新鋭74式戦車を、イスラエル軍の指揮官が「よくできたオモチャだ」と評した主旨は「戦車は砂漠で鍛えられる」ということ。ヒトラーが自信をもって東部戦線に投入した「エレファント」も「パンテル」も初期不良に悩まされ、最初は役にたたなかった。陸上自衛隊の小火器にも、実戦に使われていないものがある。
 
 M2重機関銃(12.7mm)やMINIMI分隊機関銃(5.56mm)は恐らく輸入品なので各国軍隊で使われているが、歩兵の標準装備89式小銃は日本オリジナル。武器輸出規制もあって、他国の軍隊でも装備しているところはない。
 
 兵器は、本来想定されるどのような環境でも使えないといけない。砂まみれ、泥まみれになってもジャムしづらいことが精密な命中精度より重視される。それが本当にわかるのは、実戦投入された場合に限られる。
 
 第二次「欧州」大戦に先立って、スペインで激しい内戦があった。最終的に右派フランコ軍が勝って、長く続くファシスト政権を樹立するのだが、その過程でソ連・ドイツ・イタリアらが続々武器を持ち込んだ。
 
 ソ連の「陸上戦艦」T-35が欠点を露呈したり、見るからに不細工なI-15、I-16戦闘機が意外に役立つことが分かったりしている。ドイツも、メッサーシュミットBf-109の初期型が参戦している。兵器がその真価を見せるには、(人類にとって不幸なことではあるが)舞台が必要なのだ。
 
<初出:2016.11>