八丁味噌料理というのは、名古屋の定番かと思っていたが意外と広い範囲に分布しているものだ。その代表格が「味噌田楽」、そもそもは田植えの儀式のようなお祭りのような際に催された芸能のことを指す言葉が田楽。そういう時に供された料理なのかもしれない。
僕の記憶にあるのは、主に豆腐田楽である。短冊状に切った豆腐に味噌を塗り、焼き上げたもの。親父が酒の肴として好んで食べ、一時は自宅の庭に専用のバーベキュー施設を作ろうとしたほどである。しかし、味噌田楽は豆腐に限らない。里芋のこともあればこんにゃくもある。ナスを半分に切ったものもポピュラーだ。
ただ、最近はめったにお目にかかることがなくなった。今回たまたま「おひとりさま居酒屋」の機会があって、日本酒3杯セットを呑んでいて、刺身のつぎはどうしようか迷った。目についたのが「田楽」。上記のように、こんにゃく、ナスなどがメニューにある。迷わず「豆腐田楽」を頼んだ。
で、出てきたのがこれ。確かに豆腐を焼いてある。僕の田舎では、豆腐田楽のことを通称「トフ焼き」と言うように、焼かなくては田楽ではない。それはいいのだが、赤味噌と白味噌が滴下してあって期待したものとは違う。山椒の葉らしきものが乗っているのはいいとして、僕のソウルフードである「トフ焼き」は、もっとべったり味噌が全面に塗ってあるものだ。
白味噌は甘すぎ、赤みそは少なすぎるように思った。ただ、昔のように赤味噌がべったりでは塩分が多すぎるかもしれない。これでもそれなりに美味しく食べられたので仕方ないかなと思いました。少し残念ですけれどね。
<初出:2017.5>