Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

一匹オオカミは防げない?

 「テロ等準備罪」を新設する法案の審議が、衆議院を通過して参議院に移った。国会の会期はあと10日も残っていないから、会期延長論も含めて同法の成立は不透明だ。国会での法案審議というのは、終盤に来ると時間切れをめぐる与野党の攻防が激化してくることもある。要するに時間稼ぎとその対策なのだが、あまり見好いとはいえない。

 
 この法案確かに懸念するべきことはあり、反対する野党だけでなくメディアのテンションも高い。やれ「内心の自由」を侵すとか、監視社会に陥るという主張・報道が目立つ。ただ、GPS装置を付けるのにも裁判所の許可がいるとする判決が出るくらいの法治国家である日本で、本当に彼らの言うほどの人権侵害が頻繁に起きるかどうかについては議論があろう。
 
 それにしてもこの法案審議については、大臣を含む所管省庁である法務省の不手際が目立つ。何を言っているのかわからない大臣答弁やそれを憂えて答弁に立とうとする大臣を首相が制止するなど、お笑い劇場のようだ。
 
 先日もジャーナリストである有田議員が「この法案では自爆テロは防げませんね。ローンウルフ(一匹狼)型のテロには役に立ちませんね」と問うと、法務省の局長は「一匹狼型の犯罪は、同法の対象ではありません」と応えている。
 
 TVのニュース報道で見たので編集されてしまっているかもしれないのだが、上記回答は正しいけれども十分ではない。「厳密な意味での一匹狼型テロは多くない。通常実行犯は一人でも、支援者・協力者・共犯者がいるもので、その場合はこの法律の対象である」と付け加えるべきだ。
 

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 ニュース報道では、一匹狼型テロを防げないので同法案ではテロを防げない、よって・・・と論理が展開してゆく。これは偏向報道だと、僕は思う。最近の欧州でのテロも、実行犯は射殺されたり拘束されるのだが、その後支援者と思しき容疑者が摘発されている。パリで警察官をハンマーで襲ったヤツがいるが、純粋な一匹狼かもしれないのはこれくらいである。典型的な一匹狼テロリストである「ゴルゴ13」ですら、情報屋や銃器専門家の協力を得ている。
 
 多くの被害を与えようとすれば、銃器や爆発物を入手しなくてはいけない。ターゲットや犯行場所・タイミングを選ばないといけない。実際自分でテロをやってみようと思えば、一匹狼ではなかなか難しいのがわかるはずだ。上記問答は、(編集されているのではないとすれば)平和ボケしたもので、関係者の意識がこの程度ではこの法案が成立したとしても実施にあたってはいろいろもめそうですね。
 
<初出:2017.6>