Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

今こそ考える「マイナス投票」

 「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもので、先週の衆議院解散から日本の政局はめまぐるしく動いた。保守の自由民主党、革新の社会党がみせかけの対立を演出し、その周りを中道民社党創価学会公明党、革命標榜の共産党が回っていた「昭和55年体制」のころからは、想像がつかない事態である。野党第一党解党的出直しどころか雲散霧消してしまい、東京・名古屋・大阪の知事が共闘を宣言し、大物/有名無所属立候補がかつてない数でてきそうだ。

 小泉「郵政選挙」で初めて「刺客」を請け負ったご当人が台風の目になって、血で血を洗う陰惨な選挙戦に突入しようとしている。今回「立憲民主党」候補等に向けられるのは、さほど大物の候補ではないようで、「刺客」というよりは共倒れを狙った「自爆テロ」に見える。いずれにせよ、このように候補者を恐怖させる戦術が成り立つのは、小選挙区制度ゆえである。

 

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 先ごろ亡くなった羽田元総理、自民党田中派7奉行の一人だったが離党して「政治改革」にのめりこんだ。それまでの中選挙区制だと、自民党候補が同選挙区で複数立候補し複数当選するが、候補間で党の政策に差は無いので選挙民へのサービス合戦に終始してしまうという欠点を指摘していた。確かに政党が同じなら基本政策に差があるのはおかしい。差が無いなら、候補者は地域で便宜を図ったとか贈答品をバラ撒いたとかいうことに尽力せざるを得なくなる。

 だから地元に便宜をはかる「ドブ板政治」から脱却して、政策論で政党が争う2大政党をめざした小選挙区制は政治改革につながるというロジック。わからなくはないが、ある程度の数を集めようとすると政策に違う人たちも混じってくるのも確かだ。自民党にも多様な政治家がいるがこれをなんとかひとつに見せる経験があると、ある新聞の論説にあった。一方そのような経験薄い民進党は、結局解党して「希望の党の排除の門」でスクリーニングに掛けざるを得ないことになったという。


 選挙の行方は僕には予想できないが、こういう事態になったからこそ、考えたい選挙制度がある。それは「マイナス投票」。最高裁判所裁判官の国民審査を思い出して欲しいが、多分誰もまともにチェックしていると思えない。裁判官の誰がどういう判決にどう関わったかの情報が、まず手に入らない(手に入れようともしない)からだ。一方衆議院選挙の一部の候補者たちは、メディアが毎日報道してくれて情報はたっぷりある。

 それならこの人には議員になってほしくないと思った有権者は、マイナスの投票をできるのではないだろうか。普通A候補者に1票入れるところを、刺客としてやってきたB候補にマイナス1票したら有権者の意志がより伝わるかもしれない。また組織票に守られている悪徳政治家を、市民運動のマイナス票攻勢で落選させることもできるかもしれない。議員が自分たちの制度を決めることになるから期待はできませんが、「身を切る改革」を唱える維新の党あたりには考えていただきたいものです。

 

<初出:2017.10>