Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

有体物法と情報法

 暑い中、休日だと言うのに三田にある有名な学校に行ってきた。ある学会のシンポジウムが開催されていたからである。この学会本来は文科系の学会なのだが、昨今デジタル関連のテーマでの議論が多い。今回のタイトルは「データが拓くAI・IoT時代」。

 
 キーノートはデジタル法に詳しい重鎮の先生で、従来型の有体物を対象とした法体系では無体物であるデジタル財を扱えないという話をされた。この先生とはしばらく前、無体財物が日本の刑法・民法で守られていないことを業界団体の会合で議論させてもらったことがある。

        f:id:nicky-akira:20190429085100j:plain

 先生は「長年悩んでいたものを、今回整理した」と前置きされて、次のように説明された。無限にほぼコストゼロで複製ができるデジタル情報は、有体物法体系では扱えない。「情報法」ともいうべき法体系が必要になる。情報法の世界では、所有権という概念は上手くあてはめられない。「排他的な所有」から「帰属的関係による利用」へ考え方を変えていくべきとのこと。これを聞いて、「所有から利用へ」のトレンドがデジタル化の進展と同期していることを納得できた。
 
 デジタルデータを生む主体は有体物法体系では自然人や法人だけだが、ロボットやクルマなど、IoTによってつながってくる全てのものも含まれる。だから、主体がまず所有し他者に所有権を譲渡するモデルではなく、どの範囲の人たち(モノたち?)がどういう条件でこの情報を利用できるかを定めることになるだろうということだった。
 
 法学は門外漢の僕ですが、しばらく前から悩んでいたことを法学の重鎮の先生も真剣に考えていてくださったのだな、と感動しました。こういう考え方を実社会にインプリメントしてゆくのは、「若い産学官の識者」の仕事だと思います。
 
<初出:2018.7>