Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

防衛省発足10年(後編)

 平成29年度防衛白書のパンフレット版では、サイバー空間の現状認識として、

◆軍のIT化に伴い、サイバー攻撃が(軍の)脅威になっていること
◆中国・ロシア・北朝鮮の名を上げ、国が関与するサイバー攻撃が増えていること
◆国際社会におけるサイバー空間の法の支配が必要

 の3点が挙げられている。その対応策として、

自衛隊通信システム隊などがネットワークを24時間監視し、

  侵入防止・防御システム整備等を行っている。
◇米国以外の国とも協力体制を整備し、各国との意見交換、

  国際演習への参加などを行う。
◇実践的なサイバー演習を実施し、システムの脆弱性テストも

  するため、要員の増強を図る。

 としている。説明の中には、平成30年度概算要求はサイバー関連で145億円、要員も110人から150人体制に増強するとの言葉があった。あげあしをとるわけではないが、現状認識はありきたりのものだし、対応策も自衛隊のシステムにだけ限定した話で終始していることが問題である。

 
 軍隊と警察の違いは、より強力な兵器を持っているというよりは、自己完結型の組織かどうかと思ったほうがいい。警察の機動隊が強力な制圧兵器を持っていても、彼らは各種のサプライを一般社会に頼っている。例えば輸送手段や電力、ガソリン等は民間頼みである。軍隊は、衣食住からエネルギー、移動手段まで全部自前で用意できるところに強みがある。民間が全部非機能状態になっても、軍隊はしばらくは作戦行動がとれる。

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 逆にいうと、それがサイバー攻撃等では障害になることも考えられるのだ。上記サイバー攻撃等への対応策は、全て自衛隊の組織・システムに関してのもので、民間のネットワークが停止しようが、電力供給が止まろうが自らは行動できるので、そこまでのオーバーリーチはしないことになっているはずだ。

 サイバー攻撃は国境を越えて行われると、このパンフにも書いてある。サイバー空間には国境も無ければ官民の境もないということを、よくご理解いただき次年度以降の白書や施策に活かして欲しいと思う。まずは、防衛省移行10年、おめでとうございます。
 
<初出:2017.9>