Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

東部戦線、78年目の終結

 シミュレーション・ゲーマーの中には東部戦線と聞くと「血が沸き、肉が踊る」人たちがいる。基本的に、作戦級の陸戦タイプが得意な人たちである。東部戦線は2つの陸軍大国が丸4年間、ウクライナベラルーシバルト三国などで戦った一大キャンペーンである。アバロンヒルやSPIが多くのゲームを出版し、日本メーカーもいくつか売り出していたと記憶している。

 僕自身は戦略級ゲームと戦術級ゲームが好きで、したがってあまり馴染みのないテーマだったがいくつかは買ったような記憶がある。作戦級マニアは根強く存在していて、今でも新作が発表されたりする。例えばこれは生き残った数少ないボードゲーマーのための雑誌「Command Magazine」の広告欄だが、赤軍の知将ジューコフの名を冠した新作ゲームである。

http://commandmagazine.jp/other/wws/008/index.html

 さてその東部戦線の過酷さについてはサム・ペキンパー監督の「Cross of Iron」など多くの映画でも見ることが出来るが、民間人も含めた犠牲者はソ連側で3,000万人、ドイツとその同盟国側で1,000万人と言われている。死体が確認できない犠牲者も多かったろうし、捕虜になったり脱走したりして行方不明(Missed In Action: MIA)となった人も少なからずいたはずだ。

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 特に終戦まぎわに捕虜となったドイツ人は、貴重な労働力としてソ連に連れ去られただろう。中国東北部(当時の呼称で満州)から連れ去られた日本兵と同じことが起きていたはずだ。さらに米ソ冷戦時代は「鉄のカーテン」が下りて、行方不明者捜索は難儀を極めたと思われる。ベルリンの壁崩壊までには長い月日が経ち、捜索の手がかりは限られたものになっていた。それでもドイツ政府は行方不明者捜索を続けてきたが、ついに2023年をもって捜索を終了することにしたとの記事があった。

http://www.afpbb.com/articles/-/3159775

 終戦時20歳で行方不明になった人はその時点で98歳、平均寿命から見て生存は難しいとの判断だろう。ひるがえって日本の政治イシューとなっている「拉致問題」、今回首相の施政方針演説に取り上げられなかったことで関係者は風化を恐れている。

 朝鮮半島の「板門店の壁」はまだゆるぎません。行方不明者捜索の打ち切りを言わざるを得ない時までに、これが崩壊してくれるかは神のみぞ知るということです。

 

<初出:2018.2>