第二次世界大戦終盤、ドイツ第三帝国を降伏させた連合軍は最後に残った太平洋の島国攻略の最終段階にあった。同年2月のヤルタ会談で対日参戦を他の国に承認させたソ連は、日本の衛星国である満州国から朝鮮半島への侵攻を企画していた。日露戦争で朝鮮半島への野望を絶たれていたロマノフ王朝ロシアであったが、ソ連の時代になってその夢よ再びとの思いがスターリンにはあったろう。
なにしろ大陸軍国であるドイツを破った膨大な陸空軍を、ソ連は持っている。「無敵」と宣伝された関東軍もいまや弱体化しており、これを踏み潰して釜山まで侵攻することは十分可能だった。それはまずいと英米陣営が思ったのだろうか、一刻も早く大日本帝国を降伏させようとしたのだろう米軍はできたばかりの核兵器を2つ日本の軍港に近い街に落とした。
ソ連は約束通り参戦し、満州や千島列島に侵攻したものの大日本帝国の降服によって釜山まで到達することはできなかった。朝鮮半島はドイツ同様ソ連陣営と英米陣営の分割統治の形態になり、1948年に今の韓国と北朝鮮として独立をすることになる。
ソ連は北朝鮮の指導者として、朝鮮民族としては大柄なソ連軍大尉(であったと言われる)を選び、抗日の英雄「金日成」の名を付けてデビューさせた。金日成を名乗る人物はほかにもいて白髪の老人であるとの通念があったが、ソ連を後ろ盾にしたこの人物が指導者になった。異を唱えたものもいたが次々に行方不明になり、彼の指導者としての地位は固まっていった。現在の金正恩第一書記の祖父である。
半島はしばらく大日本帝国の一部であり、抗日の闘士たちにも日本軍式の教育を受けたものも少なくなかった。武器も当初は旧日本軍のものだったが、徐々に訓練も装備もソ連化していった。なにしろスターリンは膨大な兵器のストックを持っており、軍用機のジェット化、潜水艦の改良、核兵器やミサイルの開発が進むにつれ、これらは急速に旧式化しつつあった。
その上維持費も掛かるわけだから、北朝鮮をはじめとする影響力のある諸国に旧式兵器の「払下げ」をすることになった。感謝もされるしコスト削減もできるのだから一石二鳥である。同様のことは英米陣営も韓国に対して行ったようだが、規模はけた違いだったろう。英米両国とも本質的には海洋国家であり、膨大な陸上戦力を保持していたわけではない。
<続く>