Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

続・オバマケアをめぐる攻防

 トランプ大統領就任直前に、「オバマケアをめぐる攻防」と題して、民主党共和党の抗争の経緯を紹介した。就任当日にTPP離脱を宣言したトランプ政権だが、その次に取り組むべき重要テーマは「オバマケア撤廃」であった。

 
 日本でも与党は、福祉政策について「自助・共助・公助」の順だと主張している。これはある意味あたり前のことで、自らの事は自分でやる、できない場合は助け合う、それも無理な時に「公」つまり行政に助けてもらうというわけだ。しかし、、自助・共助の取り組みが不十分な(と外からは見られる)状況で、公助を求めるケースも無いわけではない。
 
 これに対して「生活保護・なめるな」と染め抜いたウェアを作った自治体もある。これは行き過ぎだろうが、明らかな公助の「タダ乗り」には厳しい見方があってしかるべきと思う。どうも共和党支持者のうちかなりの人たちが、オバマケアを「タダ乗り」と感じているようだ。
 
 そこで早速オバマケア廃止に動いた共和党政権だが、まるきりゼロにするのは難しい。オバマケアで保険に加入できた人が3,000万人以上いるとのレポートもあるが、これらの人を直ちに無保険にするのはいかに政権交代だったとしてもできない相談だろう。また貧困により保険料が払えないからという理由だけでなく、既往症があって保険に入れなかった人を救ったのもオバマケアだった。これも含めてのゼロリセットはできなかった。

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 そこで共和党は中間的な内容の「代替法案」を作り、これを議会で採択しようと考えた。財政負担をある程度減らし、全員ではないが保険を購入できなくなる人もいるという、痛み分け法案のようなものらしい。当然オバマケアを守りたい民主党は少数派なので、順当なら成立が見込めたはずである。
 
 ところが共和党強硬派からは「手ぬるい」との批判があり、彼らが否決に回る可能性が出てきた。米国の議会には、日本のような「党議拘束」はない。自らの信念を選挙民に伝え支持を得られるなら、与党議員は正々堂々反対票を入れることができるのだ。
 
 投票の行方は、今後のトランプ政権の運営に大きな影響を及ぼす。オバマケア撤廃ひとつクリアできないのならば、あるいはクリアするのに手間暇をかけ過ぎれば、この後に続く山積みの「改革」が本当にうまくいくのかという疑念が湧いてくる。ライアン下院議長が投票を延期したことに続いて、24日にはトランプ大統領自身が事実上の「法案撤回」を指示した。
 
 この結果、本当に減税できるのか、インフラ投資ができるのか、国防予算を増やせるのか・・・。それを期待し高騰を続けてきた株式市場に、不安がよぎり始めている。そもそも期待先行で株価が上がることの方がおかしいのだが、上がってしまったものは仕方がない。クルーグマン教授は「本当のトランプショックはこれから始まる」という。
 
 
 そろそろハネムーンの100日も終わり、トランプ政権の正念場がやってくる。
 
<初出:2017.3>