Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

電磁パルスとコンピュータ

 成層圏で核爆発をさせると電磁パルスが生じて、種々の機器に障害を引き起こすことは事実である。これを使って都市機能などをマヒさせる「電磁パルス攻撃」を行う話は、いくつかの小説で取り上げられたことがある。確か「ゴルゴ13」にも、このテーマを扱った一話があった。

 
 北朝鮮の核攻撃がリアリティを増してきて、「電磁パルス攻撃」の脅威論がマスコミで取り上げられるようになった。仮に日本上空で核爆発が起きた場合どの程度の影響があるかは、その規模にもよるが諸説あって定かではない。日本のマスコミの論調は、少し危機をあおり過ぎだと思っていたら、下記のような記事を見つけた。
 
 
 確かにコンピューターを構成している電子部品にとって、宇宙線は危険なものである。電子回路が誤作動を起こしたり、ひどい時には壊れてしまう。僕が最初にコンピューターを設計し、設計書を書いた時にも「α線障害」に触れている。
 
 コンピューター機器には障害検知機能があり、接続機器との通信が出来なくなったとか、上位のコンピューターから禁止された指示が来たとか、エラーを起こした原因を探ることができる。
 
 エラーの状況や推定原因を記録(ログ)したり、通信したりしてメンテナンス要員に伝えるわけだ。記憶容量や通信速度は、現在からは信じられないくらい限られていたので、エラー情報は簡単なコードで記録・通信される。
 
 例えば、”07”はインターフェース故障、”0E”が禁止された命令が与えられた、という具合。そのコードの中に、「α線障害」という項目がある。これは何かというと、「いろいろ調べたけれどわからない。一時的に宇宙線の影響で誤動作したのではないか」というもの。
 
 とりあえずその障害検知機能はつけたものの、僕はこの「α線障害」というコードを見たことはなかった。また、宇宙線によって壊れたコンピュータというのも知らない。コンピュータの初期、確かに自然の宇宙線による障害はあった。しかしその後デバイスは進化し、自然の宇宙線ではエラーを起こさなくなったのではないかと思う。太陽フレアが通常の1,000倍に上ると言われた今回の爆発事象も、騒いだ結果何も被害は無かった。

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 現在は、あらゆるものにコンピューターが入っている。だから宇宙線による被害の機会が著しく増えているのだが、実際にはそのようなことは起きていない。人工的な電磁パルスを浴びた場合、現在の電子機器・部品がどのくらいの耐性をもっているかは分かっていない。僕は相応の耐性はあると思っていて、徒に危機をあおることはやめてほしいと思うのですが。
 
<初出:2017.9>